オリエントスター M45 F8 装いもムーブメントも新たにした意欲作が登場した。

ブランド75周年を目の前に控えた今、静謐と余白を重んじる“静の美”へと舵を切るブランドの時計づくりと新しい美の表現から目が離せない。
メカニカルムーンフェイズは2017年以来、オリエントスターの要となるコレクションとして新しいイメージを牽引してきた。ひげゼンマイやテンプが脈動する様子をダイヤルの表側から見せる意匠は、そのまま時間のダイナミックさを華やかな演出とする“動の美”を描き出してきたが、2025年秋にリリースされた新作、M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングは、あえてこれまでとは様相を異にしている。

 2017年のRK-AM0001Sに端を発する“動の美”の追求は、その表現とともに自動巻きCal.F7X62からF7M42へ進化しながら、この秋、同時に登場する新作のM45 F7 メカニカルムーンフェイズ 2025、RK-BT0001Sへと受け継がれている。41mm径ケースの存在感も失われていない。だが、もうひとつの新作でありハイライトとなるM45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングでは、ディテールのひとつひとつが主張するというよりも、要素が少ないからこそ月の移ろいゆく表情そのものが際立つ、そんな引き算による“静の美”が前景化されている。インデックスや長・短針もそうだが、すべてのていねいな作り込みが自然に質感の高い仕上げとして全体に溶け込み、あくまで月を引き立てるための静かな伴奏に徹しているかのようだ。

 12時位置にパワーリザーブインジケーターを備えるが、秒針も日付表示もない。ブルーティールが指し示すローマンインデックスの時・分以外には、6時位置の29.5日かけて巡る月齢表示こそが控え目な主役となっている。いわば、月をゆったり眺める時間に身を委ねることができる、そういう仕様なのだ。コンセプトは“夜の静寂に月がひとつ”。月の静謐さは喧騒の時間から距離を置くかのように、シンプルな造形のなかに深い余韻を生み出す。

 この新作がラインナップにもたらしたものをあえて挙げるとすれば、それは詩の持つ情緒的な雰囲気や、詩的な表現をしたいという“詩情”、言い換えれば時間の感じ方そのものを問い直すような提案だ。明らかにそれはオリエントスターが培ってきた審美性が、“静の美”という新たな境地へ歩を進める、次なるフェイズを予感させる。華美さよりも静寂、刹那のきらめきよりも永続していく移ろいを感じさせる。それがこの新たなメカニカルムーンフェイズにおける表現の軸になっている。

新しい美の表現にふさわしい新たなムーブメント

新開発のCal.F8A62。

 M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングの仕様における特徴は、まず新開発のCal.F8A62にある。そもそも手巻きのメカニカルムーンフェイズ専用に設計されたため、自動巻きのキャリバーとは異なる方向性や構造を可能とした。もちろん裏蓋はシースルーバックで、その特徴的なディテールをしっかりと鑑賞することができる。

 テンプの動きを楽しむ以外に、裏から覗く際に注目すべきポイントは3つある。ひとつは地板に施された波目模様の装飾。これは夜空の星の軌跡をイメージしたもので、波目模様は太いものと細いものが交互に配置されている。ふたつ目は、地板とブリッジのあいだからわずかに覗く青いガンギ車だ。自社開発によるシリコン製で、摩擦抵抗の少ない素材特性ゆえ、結果として70時間以上の駆動を可能にした。手巻きムーブメントはリューズを巻き上げるという行為も楽しみのひとつだが、駆動時間を伸ばすロングパワーリザーブは、リューズの負担や巻き上げ頻度を減らし、パーツの寿命に余裕をもたらすことにも繋がる。3つ目は最も遊び心に満ちたディテールで、輪列の一部が見えるよう、三日月型の切り欠きが地板に施されている。単なる手巻きムーブメントではなく、メカニカルムーンフェイズ専用ムーブメントであることをさりげなく主張するためのデザインである。

M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング
Ref.RK-BW0001S 41万8000円(税込)

“悠然とした時の姿”をテーマにし、ダイヤルの装飾的な要素を抑えた新デザインを採用した新作の手巻きモデル。シンプルな構成とすることで、きめ細かな放射目仕上げに厚クリア塗装(ラッピング加工)を加えたダイヤルをはじめ、各ディテールが持つクオリティの高さを際立たせた。

M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングの詳細を見る(ブランドサイト)

M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングの詳細を見る(公式オンラインストア)

 
 翻ってダイヤル側では、ムーンフェイズ機構の要となる月齢表示にも大幅な改良が加えられた。これまでの月齢車は、印刷や金属メッキによる一体構造だった。だが、本作では3層の別体構造となり、機能部分である歯車を備えた月齢車と、星空を散りばめた金属板のあいだに2枚の白蝶貝の“月”を挟み込み、優しい光を湛えた月が現れる意匠となった。しかも金属板に施された星空の印刷も平滑性と光沢を増したことで、質感を著しく高めている。

 こうした細部とのバランスを鑑みて、仕上げの質をさらに高めたのがダイヤルだ。ダイヤルは放射状のサンレイ仕上げを施し、そこに厚いクリア塗装を吹いている。その筋目は一般的な放射目よりもしっとりと柔らかい印象になるような手法が採用されており、厚いクリア塗装の効果でその印象はまさに柔らかく、光の角度によって表情豊かに変化する。絹のような光沢感を醸し出す。またローマンインデックスには、複数回にわたるタコ印刷で立体感を強調した。通常のタコ印刷では、転写パッドとしてシリコンが用いられるが、本作のダイヤルではゼラチン性のパッドが用いられ、通常のシリコンよりも緻密な肉盛りが施される。こうして1文字ずつ最適化されながら、印刷層を乾燥させては数層を積み重ねる工程によって、ピラミッド状の断面をもつインデックスが作られ、陰影と立体感を兼ね備えた美しい仕上がりを実現した。インデックスが自動巻きのF7メカニカルムーンフェイズよりも細いにもかかわらず、優れた視認性が確保できたのはそのためだ。

RK-BT0001Sのダイヤル。

RK-BW0001Sのダイヤル。

 ちなみにこのSSケースの素材には鍛造のSUS316Lを採用。鍛造後に地肌を切削して整え、段階的な研磨を繰り返すことで鏡面性を高めている。元よりローターをはじめとする自動巻き機構のないムーブメントは厚みが抑えられ、ケース全体の薄型化に寄与した。加えてケース厚は11.9mm、ダイヤルからサファイアクリスタル風防を支える見返しの高さも1.2mmと、自動巻きモデルと比較すると約40%も減少。風防とダイヤルの隙間が少なく、見る者の目にはダイヤルの質感が、より密度感をもって迫ってくる。つまり、M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングは、シンプルだからこそ設計から構造、仕上げまで、メカニカルムーンフェイズとしての美しさを追求したタイムピースとなった。2017年以降の一連の流れを汲むシリーズである一方、ムーブメントからケース外装、ダイヤルやムーンフェイズ機構に至るまで、まったく新しいメカニカルムーンフェイズという立ち位置にあるのだ。

M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング 掩蔽(えんぺい)
Ref.RK-BW0002N 47万3000円(税込)/Ref.RK-BW0003N 45万1000円(税込)
グレーグラデーションダイヤルを採用したリミテッドエディション。2024年に発売されたM45 F7 メカニカルムーンフェイズで取り組んだ、掩蔽(えんぺい)をテーマとしたデザインの第2弾だ。M45(すばる)を成す無数の星々をダイヤルの型打ち模様で表現し、独自に調合された塗料により、ダイヤル中心のグレーから外周に向かってブラックへと変化するモノトーンな階調を表現している。

M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング 掩蔽(えんぺい)の詳細を見る(ブランドサイト)

M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング 掩蔽(えんぺい)の詳細を見る(公式オンラインストア)

 
 一方、限定モデルとして、暗闇に光る月と昴(すばる)が天体上で重なり合う掩蔽(えんぺい)をイメージしたRK-BW0002N、ならびにRK-BW0003Nも登場する。こちらはグレーグラデーションの型打ち模様のダイヤルを採用しており、前者は100本がPSS限定でアリゲーターストラップに加えコードバンの替えストラップが付属、後者はオンライン限定で20本のみとなる。

持てる技術と作り手の思いが融合した日本的な静の美
 本作はミニマルに削ぎ落とされたメカニカルムーンフェイズウォッチだが、それは西欧的なシンプルさとはひと味違う、日本的な月の優美さを巧みに表現している。この点について、日本近現代美術史を専門にキュレーターとしても数々の企画展を手がける東北芸術工科大学准教授、小金沢 智氏にインタビューをした。

 そもそもM45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングのコンセプトは、“夜の静寂に月がひとつ”、つまり夜空にぽつりと月が浮かんだ世界観を、造形や質感、色で作り上げることだったと、商品の企画・開発に携わってきた細川 登氏は述べる。すると小金沢氏は、次のように言葉を継いだ。

「今回の時計のダイヤルが持つメタリックなシルバーの美しさについてふと思ったのは、日本絵画では太陽を表現するのに金箔、そして月を表現するのに銀箔が用いられてきたということです。厚みや経年変化で、とくに後者では色が黒っぽく変わっていくのですが、掩蔽(えんぺい)をイメージした限定モデルではそうした時間の変化を経た美しさに近い印象も感じました」

Cal.F8A62に採用されている特許出願中の新型月齢車。月齢車、月を表現した白蝶貝、そして艶のある仕上げに星を散りばめた金属板をトップに重ねる別体の3層構造とすることで精緻な月を表現した。

 日本の自然観で西洋のそれと大きく異なるのは、万物のなかに精霊が宿るというアニミズム的な感覚があること。自然は征服する対象ではなく、共存する対象であり、月や太陽などの自然物を信仰の対象として見立てられる点だという。

 小金沢氏は続ける。「美術史家の辻惟雄先生が提唱されていることですが、日本の美術の特徴は3つあります。それが“かざり”、“あそび”、“アニミズム”です。“装飾”というのは明治生まれの翻訳語ですが、それ以前から日本人の生活のなかには“かざり”という言葉があって、豊かな遊び心を生活のなかに忍ばせていたんですね。今で言う美術と工芸とのあいだの境界線はなく、それらには必ずしも過剰・華美ではない装飾も表れています。月のような自然物に特別な感情を抱くのは絵画に限らず、7世紀頃から万葉集など和歌でも月は多々詠まれてきました。ですから、時計というのは時間を知るということが第一義であるわけですが、それだけでなく、自然に対する親しみ、感覚が研ぎ澄まされた美意識が、今回意識・言語化されていないところで反映されているように感じたのです」

 デザインを担当した落合寛幸氏が、開発期間中のことを思い返し、次のように話した。

「月齢を強く派手に演出するというより、お月見をしているような感覚、静的な美しさと柔らかい世界観を、デザインしながら意識していました。昔はお城に月見櫓(つきみやぐら)が作られたりもしました。西洋では月に顔が描かれていたように擬人化されることはあったと思うのですが、月を愛でること自体が日本的な感覚なんでしょうね」

 月は、宗教の強い時代は信仰の対象でもあったが、生活のなかで美しさを湛え、満ち欠けを楽しむものであり、神々しさと同時に親しみをもって受容されてきたという。

「確かに、日月四季山水図屏風のような古い屏風でも、山水の表現はダイナミックですが、月は動いているというよりシンボルのように空にあり続けるものとして、日本絵画のなかでは描かれてきました。私は逆に、作り手の方々に聞きたいのですが、この時計に込められた美意識や時間の感覚が、どのように受容されることを願っていますか? 自己表現としてのアートとはまた違い、日本絵画は障壁画をはじめとして襖や天井など建築に付随するものも多く、部屋ごとの役割に対して望まれるイメージとして描かれてきたという歴史があります。例えば広間に静寂な風景を描くことで、空間を同時に設計している。自然の美しさ、時間における静的な美とは、静けさの失われた今の社会状況のなかで貴重なもの、心の余白のようなものではないかと思うのです」

 そう話す小金沢氏に対して、細川氏が膝を打ったように、こう答えた。

「秒針を備えなかったことが、そうした余白に通じるものなのかもしれませんね。正確な時間を知るための精度は求めますが、今回のムーンフェイズに関しては単純に刻まれる正確な時間だけでなく、時間そのものを届けたいと思ったのです。つくっている場所は信州にあるのですが、時間の感覚が都会とはまったく違うんですね。きれいな夜空に近い場所でつくっているから、世界中で忙しく動き回るグローバルな時間とは異なる、空間の余白や時間の流れが今日では贅沢なことであるというメッセージがあるのかなと思います。我々が作り手として感じる生活のなかで捉えている時間を、時計として具現化したというところですね。来年の75周年に向けた新しい美、オリエントスターとして次のフェーズに挑むデザインはもちろん考えていましたが、そうしたことを意図的にやり遂げたというよりも、持てる技術とそれにふさわしいものとは何かを追求した結果、新しい表現にたどり着いたという感覚が近いかもしれません」

 そして小金沢氏は、細川氏の言葉に続ける。

「今日本で美術と呼んでいるジャンルでは、明治時代の近代化における西洋的な価値観の下、絵画と工芸が別々のものとして分たれていきました。ですが、例えばお茶の文化を見てみれば、うつわと掛け軸は一体となってひとつの空間を形作っています。現在でいう、純粋芸術と手工芸が分たれていません。そもそも日本の視覚文化は何らかの用途や役割ということを前提として、生活に密着しながら愛でられてきた歴史があります。信州だからこそ、というお話がありましたが、風土から育まれた価値観が意識的にも無意識的にも反映されていると感じました。そうしたものの発露として、新しいM45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングが生まれたということが、私にはとても日本的に感じられ、そこに美が表れていると思います」

カルティエが「サントス デュモン」のコレクションを復活させてから、

今年発売された「サントス デュモン」 スケルトン マイクロローターにより、2019年にリリースされた比較的手頃な価格、そしてクォーツの「サントス デュモン」からコレクションがどれだけ進歩したかを印象づけた。

カルティエは2023年に、「サントス デュモン」コレクションを復活させた。

「サントス デュモン」は1904年に誕生し、最初の市販男性用腕時計として知られる。同モデルの歴史のほとんどで「サントス デュモン」はレザーストラップに身を包んだドレッシーな時計であった。1978年、カルティエは別ラインとしてサントス ドゥ カルティエを発表。ブレスレットの追加とモデルの改良によって真のスポーツウォッチとなり、オーデマ ピゲやパテック フィリップなどによる新しいブレスレット一体型の高級スポーツウォッチに挑んだ。2019年、「サントス デュモン」のドレスアップしたモデルが再リリースされたことで、このモデルに大きく引かれるようになったが、クォーツでしか手に入らなかったため、違う機械式を探し始めた。結局、90年代製の「サントス デュモン」 CPCPを購入した。この時計についてはこちらに記事を書いている。

イエローゴールド(ブルーラッカー)、ローズゴールド、スティールの3種類の金属を使用した、カルティエ 「サントス デュモン」 マイクロローター。なおイエローゴールドは150本の数量限定。

今年のWatches & Wondersで、カルティエはSS、RG、限定版のYGを素材に使用した「サントス デュモン」 スケルトン マイクロローターを発表した。私が手にすることができたのはSS製バージョンで、デザインを第一に考えつつも、優れた時計づくりをこっそり備えているのだ。

「サントス デュモン」 スケルトン マイクロローターは、カルティエの“ラージ”サイズケースを採用しており、直径が31mm、厚さが8mmとなっている。手首で存在感は放つが“XL”ほど大きすぎず、このモデルにぴったりの現代的なサイズだ。見事なまでのムーブメントに加え、異なるストーンからローマ数字を切り出したほかの新作「サントス デュモン」と比較して、スケルトン マイクロローターのほうを好む理由はそのサイズにある。

「サントス デュモン」 スケルトン マイクロローターの主役となるのは新しくスケルトナイズされたCal.9629 MCだ。2009年に発表された“サントス 100”以来、数々のスケルトンキャリバーをリリースしてきたカルティエが新たにリリースした美しいスケルトンムーブメントである。ブリッジがインデックスを形成し、さらに主ゼンマイ、歯車列、ヒゲゼンマイがすべて見えるビジュアルだ。2時位置で見られるように、主ゼンマイは小振りで、キャリバーのパワーリザーブは約44時間とやや短い。ヒゲゼンマイの反対側に位置する主ゼンマイは、キャリバーに対して一定の対称性をもたらす。防水性は30mと、この手の時計としては十分なスペックだ。

本作はマイクロローターの上を飛ぶ小さな飛行機が美的な焦点となっている。実際に時計を手に取る前に取材したときは、なんだかおもしろみに欠けると思っていた。私は「サントス デュモン」が大好きだが、それはそのデザインだからであって、パイロットとの歴史的なつながりがあるからではない。この関連性は素晴らしいマーケティングストーリーにはなるが、マイクロローターは少し直球すぎないかと感じたのだ。

しかし飛行機は大きすぎず、地下鉄の車両を挟んでかろうじて目立つ程度だ。ローターは「サントス デュモン」の歴史にちなんだもので、もともとは同名の有名な飛行士のためにルイ・カルティエが作ったものだ。マイクロローターに施された飛行機は、サントス=デュモンの有名な“ラ ドゥモワゼル”という飛行機の模型だ。話によると、サントス=デュモンは少し風変わりな発明家で、熱気球に乗ってパリの人気の場所でディナーに現れるような人だったという。いずれの場合も、機体は金属とマッチし、デザインにまとまりがあり、ギミックが多すぎない。また、マイクロローターは離陸するために多少の動作が必要になるため、サントス デュモンの着用や計時の邪魔にはならない。

文字盤には伝統的なローマ数字は使われていないが、それでも時間を示すのにシンプルであることは、カルティエのデザインの証でもある。なんといってもベゼルのネジとキャリバーのブリッジの両方が、インデックスとも時間を知らせるのに役立っている。またブリッジにはストラップ(SSはブラック)に合わせて、小さくラッカーの線を入れている 。「サントス デュモン」 マイクロローターのシルエットや形状は一見すると見慣れたもので、オリジナルデザインに忠実でありながら、よく見ると完全に現代的なものにアップデートされている。またカルティエの継承に基づいた忠実な復刻モデルの多くに見られるように、ケースはコンパクトで薄い。同ムーブメントは視覚的にも優れていて、仕上げのほとんどを機械で行っているように見えるが、SSで451万4400円、YGで605万8800円(ともに税込予価)という価格のカルティエに期待するところである。

YGモデルにブルーラッカー仕上げのベゼルとケースを組み合わせたモデルは、2022年のラッカー仕上げのケースの成功を踏まえた、おそらく最高に位置するものだ。ただし150本までと制限されているため、大半の人はRGかSSモデルで落ち着く必要がある。カルティエが通常の生産品でもラッカー処理をしていたら最高だった。

カルティエがコレクションにSSを加えてくれたことに感謝する。そしてそれは金無垢よりも少し安いオプションで、「サントス デュモン」をドレスとスポーツをミックスしたような時計に仕上げている。それでも451万4400円(税込予価)という価格は、SSモデルの例としては決して安価な時計ではないが、過去数年間にカルティエから発売された強気な価格のヘリテージウォッチと比べると、十分楽しめる時計である。

「サントス デュモン」のファンであると公言している私としては、今回のスケルトン マイクロローターはラインナップに加わるにふさわしいと感じる。これはカルティエが現在最もエキサイティングな時計メーカーのひとつであることを示す一例だ。印象的な時計づくりでありながら、伝統とデザインの範囲内に身を置いている。この組み合わせはスケルトン マイクロローターという文字どおりのもので、メゾンが美しくも新しいスケルトンムーブメントを生み出し、それをクラシックなサイズ&デザインのサントス デュモンに搭載した。「サントス デュモン」のコレクションを復活させてから4年、このモデルはこれまでで最も現代的なものとなり、現代のアルベルト・サントス=デュモンにふさわしい時計となったが、熱気球に乗ってやってはこれない。

同僚のペドロの17.25cmの手首に装着した「サントス デュモン」(私の小さい手首にも装着できる)。

カルティエ 「サントス デュモン 」スケルトン マイクロローター。ステンレススティール(Ref.CRWHSA0032)、イエローゴールド(Ref.CRWHSA0031)、ローズゴールド(Ref.CRWHSA0030)。いずれも31mm径、8mm厚。イエローゴールドは150本限定で、ベゼルにブルーラッカーを採用。いずれもカルティエの新手巻きCal.9629 MC。振動数は2万5200振動/時、パワーリザーブは約44時間。アリゲーターストラップ、ピンバックル。価格はすべて税込予価で、451万4400円(SS)、587万4000円(RG)、605万8800円(YG)。カルティエ ブティックにて発売中。

カルティエのウォッチメイキングの世界へよりディープに潜り込む。

「パイオニア精神」「フォルムを生み出すウォッチメイカー」「デザイン文化」「美を支える技術」と、それぞれテーマごとに区切られたスペースでカルティエのウォッチメイキングにおける重要な4つのビジョンについて理解を深めることが可能なこのイベント。なんとか時間を見つけてようやく来ることができたと、食い入るようにさまざまな展示や時計を見つめる方はもちろんのこと、会期中に幾度も足を運んだという熱心な方もこれで見納めと、最終日も多くの来場者が大いにイベントを楽しんだ。

外観はもちろん、会場のなかもカルティエを象徴する赤で統一。没入体験イベントにふさわしい非日常的な空間に。

フォトブースも用意されており、さっそく会場を訪れた読者の多くが思い思いに写真を撮り楽しんでいたようだ。

Room1. Pioneering Spirit/「パイオニア精神」

カルティエの黎明期、カルティエファミリーがいかにしてメゾンの進化を促したかに焦点をあて、実用的な意味で世界初となった腕時計「サントス」誕生の背景や「タンク」の誕生にかかわった3代目当主ルイ・カルティエの時計史における功績が紹介された。

Room2. Watchmaker of shapes/「フォルムを生み出すウォッチメイカー」
時計の内部にいるかのような設えが特徴的な​エリアに​約50本のカルティエ ウォッチを展示。​それぞれが持つフォルムのユニークさを垣間見ることがでる。このイベントのためにアーカイブピース「カルティエ コレクション」も来日し展示され、時代を超越したケースフォルムへの追求を体感。

​約50本のカルティエ ウォッチを展示されたRoom2。時計がズラリと並んでいたこともあり、多くの読者がこの場でトークを楽しんでいた。

普段お目にかかれないアーカイブピース「カルティエ コレクション」が展示されているということもあって、自身のカメラで写真に収める人も少なくなかった。

Room3. Culture of Design/「デザイン文化」

まるで宙に浮いているかのような展示が印象的だったこのエリア。「タンク」「サントス ドゥ カルティエ」「パンテール ドゥ カルティエ」「バロン ブルー ドゥ カルティエ」の4つのアイコンウォッチを通し、デザイン文化を意欲的に探求し続けるメゾンの基本理念を表現。

Room4. Technique Serves Beauty/「美を支える技術」

デザインと技術の融合、そして時計制作のかかわるサヴォアフェール(職人技)など、これまであまり語られてこなかったさまざまなエピソードを紹介。ウォッチメイカーであると同時にハイジュエリーメゾンであるカルティエが持つユニークさを知ることができる内容だ。

YouTube公開収録の会場スペースに入ってすぐに目に入って来たのは、“Cartier”ロゴの大きなオーナメント。

4つの展示スペースを抜けて、「コノサーズトーク」公開収録会場へ

 事前にこちらの記事でも案内していたとおり、最終日にはこの特別なイベント展示会場で、時計専門誌クロノス日本版 編集長の広田雅将さんと、HODINKEE Japan 編集長の関口 優がホストを務める動画コンテンツ「コノサーズトーク」第3弾の公開収録が読者の皆様を招待して実施された。

右から時計専門誌クロノス日本版 編集長の広田雅将さん、江口洋品店・時計店代表、江口大介さん、HODINKEE Japan 編集長の関口 優。カルティエのウォッチメイキングをテーマに話が弾む。

江口さんはヴィンテージのタンクに早くから注目し、日本における近年のタンクブームを牽引した。

 今回の公開収録では、スペシャルゲストとして江口洋品店・時計店代表、江口大介さんも登場。江口さんを交えながら、カルティエのウォッチメイキングを深掘りした。終始和やかな空気のなかで進んだ収録だったが、方や時計メディアとして、方やヴィンテージウォッチディーラーとして、さまざまな視点からカルティエのウォッチメイキングについて意見を交わした。収録後半には質疑応答の時間も設けられた。「いまはなくなっているがお気に入りだったモデルは?」「最初に買うのにおすすめのモデルとは何か?」という質問に、それぞれがその思いとともに回答。気になるコノサーズトークの詳細は後日公開予定なので、乞うご期待。なお、これまでのコノサーズトークの様子は以下の動画から確認して欲しい。

記事「カルティエが紡ぐ時計デザインとシェイプの進化がもたらす価値とは」(PR)

記事「サントスの名を持つ時計がたくさんあるので、実際に違いを理解してみることにした」(PR)

読者の皆さんは、どんなカルティエウォッチをつけているの?
 公開収録に参加いただいた多くの読者のリストショットは、もちろん押さえている。どうやら皆、熱心なカルティエファンのようだ。

カルティエスタッフのリストショット。さらりとつけた姿が様になっている。CPCPの「トーチュ」 ワンプッシュクロノグラフ イエローゴールド。

こちらは「タンク マスト」LM ソーラービート™搭載モデル。モノトーンのシックな装いに映える。

6時位置に日付がないこちらは、35.1mmの「サントス ドゥ カルティエ」MM、グラデーションブルーダイヤルだ。

日付がないので、左の方と同じく「サントス ドゥ カルティエ」MM。こちらはシルバー仕上げのオパラインダイヤル。

「タンク マスト」。LMサイズだろうか。ライトブルーのストラップが、なんとも爽やかな雰囲気を醸し出している。

こちらの女性がつけていたのは「パシャ C」。35mmと小ぶりだが、ブレスレット仕様でしっかりと存在感を主張している。

まさかの共演。ともに2022年の新作として発売された「サントス デュモン」。左はブラックラッカー仕上げが施されたベゼルとラグが特徴的なSSモデル、右は世界限定250本のベージュラッカーベゼルを持つピンクゴールドモデルだ。

これは大胆な文字盤デザインが目を引く、「タンク ソロ」LM インデックス アニメーション。ケースがオーソドックスなだけに文字盤の存在感が際立っている。

「タンク ルイ カルティエ」のピンクゴールド。サイズ感からするとLMだろうか。丸みのあるケースサイドの形状とダイヤルのギヨシェがポイントだ。

これはかなり珍しいのではないだろうか。アンティークの「タンク ルイ カルティエ」。特徴的なレイルウェイインデックスがなく、極めてシンプルなデザインだ。

ブラックラッカー仕上げが施されたベゼルとラグが特徴的な「サントス デュモン」のSSモデル。いち早く購入できたという幸運がうらやましい限り。

「サントス 100」。51.1×41.3mmという大ぶりなサイズとリューズガード付きのがっしりとしたケースが、「サントス」に力強い印象を与える。

「サントス ドゥ カルティエ」MM。シルバー仕上げのオパラインダイヤルとマッチした淡いトーンの素敵なコーディネートが印象的。

公開収録を終えて

 公開収録終了後は、会場を移してカルティエウォッチのタッチ&トライの時間も設けられた。短い時間ではあったものの、多くの読者が見て、聞いて、そして触って、じっくりとカルティエのウォッチメイキングの世界へと入り込むことができたのではないだろうか?

ヴィンテージの人気モデル、アンタークティックが細部まで復刻しつつオリジナルのプロポーション同様にスリム化した。

往々にして、ヴィンテージかモダンかという議論はほとんどが理論的なものだ。古い腕時計と新しい腕時計は明白に異なる魅力を持っており、どちらを買うべきかは、あなたがどの系統の時計病に悩まされているかによって決まる。

しかし、ニバダ グレンヒェンが新しい35mmのアンタークティックを、オリジナルのヴィンテージアンタークティックと一緒に見る機会を提供してくれたとき、長年の疑問を検証するチャンスのように感じた。ヴィンテージかモダンか? あるいはなぜ両方ではないのか?

11月、ニバダ グレンヒェンはアンタークティック 35mmモデルを発表した。新しいニバダ グレンヒェン アンタークティックの外観は、オリジナルのアンタークティックとよく似ている。ケースサイズは35mm径、厚さは10mm(風防を除くと7mm厚)だ。手首につけるとスリムな印象で、ラグからラグまでは42mm。ケースは完全ポリッシュで、そのインスピレーションを模したファセットラグが付いている。手首の大きさによっては小さすぎるかもしれないが、ニバダ グレンヒェンにはすでに、大振りなスーパーアンタークティックが存在する。私にとって今回アップデートされた35mmは、ブランドが2020年に再開したと同時にリリースした最初のアンタークティックよりも、はるかに成功していると感じる。その前のバージョンはモダンな時計になろうとしすぎて、その結果、すでに市場に出回っているほかの多くの時計と同じように見えてしまったのだ。

ニバダ グレンヒェンは今、見せかけを取り払い、本質的にオリジナルのアンタークティックを細部まで再現した復刻版をつくりあげた。これは約36時間パワーリザーブを備えた、シンプルな手巻きムーブメント、ランデロン21のおかげでもある。自動巻きムーブメントより実用性が劣るのは間違いないが、手に巻いたときの感触を重視した上でのチョイスだ。幸いなことに薄くて軽量ながらも存在感を放ち、その選択は成功したようだ。モダンで完全に実用的なフィールドウォッチが欲しい人は、ほかで試せばいい(Apple Storeを覗いてみるのはいいかもしれない)。ニバダ グレンヒェン アンタークティックは、忠実さのために機能を犠牲にした復刻モデルであるが、それを恥じることはない。私はその認識力を高く評価している。

ニバダ グレンヒェン アンタークティック 35mmは、ホワイト、エッグシェル、ブラックのいずれかのダイヤルオプションを提供しており、いずれもホワイトまたはベージュのルミノバ夜光を採用している。ブランドから送られてきたのは、ベージュ夜光が入ったホワイトバージョンだった(どちらかと言えば“フォティーナ”仕様)。数字はまぎれもなくアール・デコスタイルで、あらゆる方向に光を反射するファセットアローがそれを引き立てている。夜光マーカーもオリジナルにインスパイアされたもので、典型的なドットではなく、わずかに角度のついた線が配されている。

スマイルアンドウェイブ(笑顔で手を振って!)

新旧ともにスリムな形状をしている。

フォティーナ夜光が付いたエッグシェル文字盤か、あるいはホワイト文字盤にホワイト夜光の組み合わせのほうがよかったかもしれない。真っ白な文字盤に対してベージュ夜光がややマッチしていない。アンタークティック(南極)と呼ばれる時計を、スノーホワイトダイヤル仕様にしたというアイデアは大好きだが、私にとってはエッグシェルこそが、この時計のヴィンテージ志向を最もよく表していると感じる。

850ドル(日本円で約12万5000円)という価格は、競合製品と比較しても妥当だろう。スペック上、カーキ フィールド メカニカル(税込8万5800円)が最も自然な比較のように思えるが、アンタークティックは従来のフィールドウォッチとは違った雰囲気がある。

南極の風より涼しい
新しいアンタークティック 35mmは、1950年代のニバダ グレンヒェンの同名作品からインスピレーションを得ている。50年代半ば、米国は“ディープフリーズ作戦”と呼ばれる、一連の南極探査ミッションを開始した。リチャード・バード(Richard Byrd)提督がミッションを指揮しており、彼の手首にはニバダ グレンヒェン(クロトン)のアンタークティックがあった。次のような広告でまったく同じ時計を目にすることができる。

アンタークティックは頑丈で防水性があり、耐衝撃性もあった。それでいて35mm径だ。ヴィンテージのアンタークティックは現代の例と驚くほど似ている。ほんのわずかにアップデートが加えられた、完全復刻モデルである。リューズは最新版のほうが若干操作性が高いが、ヴィンテージアンタークティックは自動巻きムーブメントを搭載していたため、頻繁に巻き上げる必要はなかった。

新しいアンタークティックの真っ白な文字盤はシンプルさが魅力的だが、ヴィンテージは文字盤にこそ魅力がにじみ出ている。これはともにいい部分がある。誰かの物語を手首につけているのはそれだけでクールだし、あるいは思い出を新たに刻むことができるのもいいかもしれない。もちろん、ヴィンテージウォッチを実際に身につけて行動できるのか、あるいは身につけるべきなのかという不安もつきまとうだろう。

価格について、ニバダ グレンヒェンのギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏によると、状態にもよるものの600ユーロから1000ユーロ(日本円で約9万5000~15万9000円)でヴィンテージアンタークティックを見つけることができるという。ただ素晴らしいものを待つ必要はあるかもしれない。

結局のところヴィンテージかモダンか
“ヴィンテージ”、“モダン”コレクターの区別は、かつてないほど時代遅れ感がある。“真の”ヴィンテージの定義が何なのか(あるいは誰が決めるのか)ますますわからなくなってきているし、“ネオヴィンテージ”ウォッチへの関心も高まっている今、それが重要なのかどうかもわからない。最近のコレクターが求めているのは、1年前のものであれ51年前のものであれ、しっかりとした作りの時計なのだ。

ギヨーム・ライデ氏が2020年にニバダ グレンヒェンをリニューアルして以来、ブランドの伝統を生かした多くの商品や限定モデルをリリースしている。これはエクセルシオパークやヴァルカンといった、ほかの“ゾンビ”ブランドで行ってきたのと同じことだ。私が注目するリリースは、オリジナルに最も近い色合いのものであることが多い。誰かがブランドの歴史を直接的に、そして謝罪なしに堂々と描いているのを見るのは楽しい。

正直なところ、この価格帯のモダンなフィールドスタイルウォッチを買うとしたら、スタジオ・アンダードッグのフィールドコレクションのような、遊び心のあるユニークなフォルムのものにお金を費やすだろう。しかし、それらは私が現代の時計に求める基準だ。代わりに、愛するヴィンテージモデルの忠実な復刻版を望む人もきっといるだろう。この2点を比較するのはフェアではないかもしれない。というのも現在では両者ともに十分すぎるほどの伸びしろがあり、さらにそれ以上の余地があるからだ。

ニバダ グレンヒェン アンタークティック 35mmは、ニバダ グレンヒェン公式ウェブサイトにて12月23日まで予約受付中。35mm径×10mm厚(ラグからラグまでは42mm径)、316Lステンレススティール。ラグ幅は18mm(ストラップは16mmまでテーパーがかっている)。50m防水、ダブルドーム型サファイア風防。ムーブメントは手巻きCal.ランデロン21、2万8800振動/時、約36時間パワーリザーブ。ホワイト、エッグシェル、ブラック文字盤。ホワイトまたはベージュ夜光。質感のあるレザーストラップ。価格は850ドル(日本円で約12万5000円)。

プロパイロットXに万華鏡のような色彩をもたらした、最新のレーザー加工。

オリス プロパイロットX キャリバー400 “レーザー”が、ダイヤルに光のショーを演出する。
2022年にプロパイロットXコレクションを発表して以来、オリスはそれをとことん楽しみ尽くしてきた。その初代ラインナップのなかで、私の個人的なお気に入りは鮮やかなサーモンダイヤルだった。オリスは今年プロパイロットX カーミットを発表し、鮮やかなグリーンダイヤルのデイト窓に月に1度現れる、カエルの笑顔をフィーチャーした。そして今回、オリスはドバイ・ウォッチ・ウィークに合わせ、チューリッヒの研究所との共同研究によるレーザー技術を駆使し、これまでに見たことのないダイヤルを備えたプロパイロットX “レーザー”を発表した。

まずは最初にそのダイヤルの話から。オリスによると、角度によって光を受けて色が変化するダイヤルを作るために、製造工程上で斬新なレーザー技術が使われている。オリスはこの加工について、光をさまざまな組成に分割する表面加工を施すことで、時計を見る場所によって虹のような効果を生み出すと説明している。赤の光波は打ち消され、緑と青の光波は反射されることで、ダイヤルのクールなグラデーションが生まれるのだ。ロゴとインデックス、ミニッツトラック、ダイヤル上のテキストにもレーザー加工が施され、立体的な効果を与えている。

ダイヤル以外に目を向けると、“レーザー”はプロパイロットXのおなじみのフォルムに、39mm径のチタンケースとそれにマッチするブレスレットを採用している。内部にはオリスのマニュファクチュールキャリバー400が搭載され、5日間という驚異的なパワーリザーブを誇る。2020年にキャリバー400を発表した当初は、性能に関する不満や批判もあったが、現時点ではすべて解消されているようだ。そして今回の発表では、ちょっとした微調整が加えられた。

オリス プロパイロットX “レーザー”の希望小売価格は81万4000円(税込)で、HODINKEE Shopを含むオリス正規販売店で購入可能だ。

このチタンダイヤルはブルーからグリーン、パープルまでの美しいグラデーションを描くが、オリスの説明によると、実はダイヤルには色の顔料は使われていない。その代わり、レーザー処理によってチタンに変化が与えられており、反射して戻ってくる光の波が可視光線のスペクトルの特定の部分だけを含むようにしている。さらに、“きらめく”レインボー効果を生み出すために、その他の処理も加えられている。

私はまだこの時計を実際に見たことはないが、優れたダイヤルを作るために採用されたエキサイティングな技術が施されていることは間違いなさそうだ。しかも、パイロットウォッチを完璧にモダンにアレンジしたプロパイロットXに自然とフィットするような仕上がりだ。こうしたダイヤルのデザインをとるのは、オリスが6時位置のデイト窓を廃止する絶好のタイミングでもあった。特に、あるカエルがそこから顔を出していたときなどはあまり気になったことはなかったが、これはシンプルな3針時計にふさわしいダイヤルであり、これ以上のものはなさそうに思える。

新しい“レーザー”の希望小売価格は81万4000円(税込)で、スタンダードダイヤルのモデルは69万3000円(税込)だ(“カーミット”は税込72万6000円で、カエルのバッグがついてくる)。レーザーテクノロジーが駆使されているためにこの値段でも十分と思えるが、約5000ドルというのは現在極めて競争力のある価格帯である。ともあれ、手首の上でレーザーショーを楽しみたい人たちにとって、新たな選択肢ができたことは素晴らしいことだ。プロパイロットXが、漫画のカエルであれ、最先端のレーザーであれ、オリスからの実験的の提案であるならば私は大歓迎だ。

基本情報
ブランド: オリス(Oris)
モデル名: プロパイロットX キャリバー400 “レーザー”

直径: 39mm
厚さ: 12mm
ケース素材: チタン
文字盤色: レーザー加工が施されたチタン
夜光: 針にブラックのスーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: チタン製ブレスレット

oris propilot caliber 400 movement caseback
ムーブメント情報
キャリバー: オリス キャリバー400
機能: 時間、デイト表示
直径: 30mm
パワーリザーブ: 120時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 21
クロノメーター認定: なし、オリスは1日あたり-3/+5秒の精度と公表している
追加情報: MyOris登録で10年の延長保証

価格 & 発売情報
価格: 81万4000円(税込)