カルティエのウォッチメイキングの世界へよりディープに潜り込む。

「パイオニア精神」「フォルムを生み出すウォッチメイカー」「デザイン文化」「美を支える技術」と、それぞれテーマごとに区切られたスペースでカルティエのウォッチメイキングにおける重要な4つのビジョンについて理解を深めることが可能なこのイベント。なんとか時間を見つけてようやく来ることができたと、食い入るようにさまざまな展示や時計を見つめる方はもちろんのこと、会期中に幾度も足を運んだという熱心な方もこれで見納めと、最終日も多くの来場者が大いにイベントを楽しんだ。

外観はもちろん、会場のなかもカルティエを象徴する赤で統一。没入体験イベントにふさわしい非日常的な空間に。

フォトブースも用意されており、さっそく会場を訪れた読者の多くが思い思いに写真を撮り楽しんでいたようだ。

Room1. Pioneering Spirit/「パイオニア精神」

カルティエの黎明期、カルティエファミリーがいかにしてメゾンの進化を促したかに焦点をあて、実用的な意味で世界初となった腕時計「サントス」誕生の背景や「タンク」の誕生にかかわった3代目当主ルイ・カルティエの時計史における功績が紹介された。

Room2. Watchmaker of shapes/「フォルムを生み出すウォッチメイカー」
時計の内部にいるかのような設えが特徴的な​エリアに​約50本のカルティエ ウォッチを展示。​それぞれが持つフォルムのユニークさを垣間見ることがでる。このイベントのためにアーカイブピース「カルティエ コレクション」も来日し展示され、時代を超越したケースフォルムへの追求を体感。

​約50本のカルティエ ウォッチを展示されたRoom2。時計がズラリと並んでいたこともあり、多くの読者がこの場でトークを楽しんでいた。

普段お目にかかれないアーカイブピース「カルティエ コレクション」が展示されているということもあって、自身のカメラで写真に収める人も少なくなかった。

Room3. Culture of Design/「デザイン文化」

まるで宙に浮いているかのような展示が印象的だったこのエリア。「タンク」「サントス ドゥ カルティエ」「パンテール ドゥ カルティエ」「バロン ブルー ドゥ カルティエ」の4つのアイコンウォッチを通し、デザイン文化を意欲的に探求し続けるメゾンの基本理念を表現。

Room4. Technique Serves Beauty/「美を支える技術」

デザインと技術の融合、そして時計制作のかかわるサヴォアフェール(職人技)など、これまであまり語られてこなかったさまざまなエピソードを紹介。ウォッチメイカーであると同時にハイジュエリーメゾンであるカルティエが持つユニークさを知ることができる内容だ。

YouTube公開収録の会場スペースに入ってすぐに目に入って来たのは、“Cartier”ロゴの大きなオーナメント。

4つの展示スペースを抜けて、「コノサーズトーク」公開収録会場へ

 事前にこちらの記事でも案内していたとおり、最終日にはこの特別なイベント展示会場で、時計専門誌クロノス日本版 編集長の広田雅将さんと、HODINKEE Japan 編集長の関口 優がホストを務める動画コンテンツ「コノサーズトーク」第3弾の公開収録が読者の皆様を招待して実施された。

右から時計専門誌クロノス日本版 編集長の広田雅将さん、江口洋品店・時計店代表、江口大介さん、HODINKEE Japan 編集長の関口 優。カルティエのウォッチメイキングをテーマに話が弾む。

江口さんはヴィンテージのタンクに早くから注目し、日本における近年のタンクブームを牽引した。

 今回の公開収録では、スペシャルゲストとして江口洋品店・時計店代表、江口大介さんも登場。江口さんを交えながら、カルティエのウォッチメイキングを深掘りした。終始和やかな空気のなかで進んだ収録だったが、方や時計メディアとして、方やヴィンテージウォッチディーラーとして、さまざまな視点からカルティエのウォッチメイキングについて意見を交わした。収録後半には質疑応答の時間も設けられた。「いまはなくなっているがお気に入りだったモデルは?」「最初に買うのにおすすめのモデルとは何か?」という質問に、それぞれがその思いとともに回答。気になるコノサーズトークの詳細は後日公開予定なので、乞うご期待。なお、これまでのコノサーズトークの様子は以下の動画から確認して欲しい。

記事「カルティエが紡ぐ時計デザインとシェイプの進化がもたらす価値とは」(PR)

記事「サントスの名を持つ時計がたくさんあるので、実際に違いを理解してみることにした」(PR)

読者の皆さんは、どんなカルティエウォッチをつけているの?
 公開収録に参加いただいた多くの読者のリストショットは、もちろん押さえている。どうやら皆、熱心なカルティエファンのようだ。

カルティエスタッフのリストショット。さらりとつけた姿が様になっている。CPCPの「トーチュ」 ワンプッシュクロノグラフ イエローゴールド。

こちらは「タンク マスト」LM ソーラービート™搭載モデル。モノトーンのシックな装いに映える。

6時位置に日付がないこちらは、35.1mmの「サントス ドゥ カルティエ」MM、グラデーションブルーダイヤルだ。

日付がないので、左の方と同じく「サントス ドゥ カルティエ」MM。こちらはシルバー仕上げのオパラインダイヤル。

「タンク マスト」。LMサイズだろうか。ライトブルーのストラップが、なんとも爽やかな雰囲気を醸し出している。

こちらの女性がつけていたのは「パシャ C」。35mmと小ぶりだが、ブレスレット仕様でしっかりと存在感を主張している。

まさかの共演。ともに2022年の新作として発売された「サントス デュモン」。左はブラックラッカー仕上げが施されたベゼルとラグが特徴的なSSモデル、右は世界限定250本のベージュラッカーベゼルを持つピンクゴールドモデルだ。

これは大胆な文字盤デザインが目を引く、「タンク ソロ」LM インデックス アニメーション。ケースがオーソドックスなだけに文字盤の存在感が際立っている。

「タンク ルイ カルティエ」のピンクゴールド。サイズ感からするとLMだろうか。丸みのあるケースサイドの形状とダイヤルのギヨシェがポイントだ。

これはかなり珍しいのではないだろうか。アンティークの「タンク ルイ カルティエ」。特徴的なレイルウェイインデックスがなく、極めてシンプルなデザインだ。

ブラックラッカー仕上げが施されたベゼルとラグが特徴的な「サントス デュモン」のSSモデル。いち早く購入できたという幸運がうらやましい限り。

「サントス 100」。51.1×41.3mmという大ぶりなサイズとリューズガード付きのがっしりとしたケースが、「サントス」に力強い印象を与える。

「サントス ドゥ カルティエ」MM。シルバー仕上げのオパラインダイヤルとマッチした淡いトーンの素敵なコーディネートが印象的。

公開収録を終えて

 公開収録終了後は、会場を移してカルティエウォッチのタッチ&トライの時間も設けられた。短い時間ではあったものの、多くの読者が見て、聞いて、そして触って、じっくりとカルティエのウォッチメイキングの世界へと入り込むことができたのではないだろうか?

ヴィンテージの人気モデル、アンタークティックが細部まで復刻しつつオリジナルのプロポーション同様にスリム化した。

往々にして、ヴィンテージかモダンかという議論はほとんどが理論的なものだ。古い腕時計と新しい腕時計は明白に異なる魅力を持っており、どちらを買うべきかは、あなたがどの系統の時計病に悩まされているかによって決まる。

しかし、ニバダ グレンヒェンが新しい35mmのアンタークティックを、オリジナルのヴィンテージアンタークティックと一緒に見る機会を提供してくれたとき、長年の疑問を検証するチャンスのように感じた。ヴィンテージかモダンか? あるいはなぜ両方ではないのか?

11月、ニバダ グレンヒェンはアンタークティック 35mmモデルを発表した。新しいニバダ グレンヒェン アンタークティックの外観は、オリジナルのアンタークティックとよく似ている。ケースサイズは35mm径、厚さは10mm(風防を除くと7mm厚)だ。手首につけるとスリムな印象で、ラグからラグまでは42mm。ケースは完全ポリッシュで、そのインスピレーションを模したファセットラグが付いている。手首の大きさによっては小さすぎるかもしれないが、ニバダ グレンヒェンにはすでに、大振りなスーパーアンタークティックが存在する。私にとって今回アップデートされた35mmは、ブランドが2020年に再開したと同時にリリースした最初のアンタークティックよりも、はるかに成功していると感じる。その前のバージョンはモダンな時計になろうとしすぎて、その結果、すでに市場に出回っているほかの多くの時計と同じように見えてしまったのだ。

ニバダ グレンヒェンは今、見せかけを取り払い、本質的にオリジナルのアンタークティックを細部まで再現した復刻版をつくりあげた。これは約36時間パワーリザーブを備えた、シンプルな手巻きムーブメント、ランデロン21のおかげでもある。自動巻きムーブメントより実用性が劣るのは間違いないが、手に巻いたときの感触を重視した上でのチョイスだ。幸いなことに薄くて軽量ながらも存在感を放ち、その選択は成功したようだ。モダンで完全に実用的なフィールドウォッチが欲しい人は、ほかで試せばいい(Apple Storeを覗いてみるのはいいかもしれない)。ニバダ グレンヒェン アンタークティックは、忠実さのために機能を犠牲にした復刻モデルであるが、それを恥じることはない。私はその認識力を高く評価している。

ニバダ グレンヒェン アンタークティック 35mmは、ホワイト、エッグシェル、ブラックのいずれかのダイヤルオプションを提供しており、いずれもホワイトまたはベージュのルミノバ夜光を採用している。ブランドから送られてきたのは、ベージュ夜光が入ったホワイトバージョンだった(どちらかと言えば“フォティーナ”仕様)。数字はまぎれもなくアール・デコスタイルで、あらゆる方向に光を反射するファセットアローがそれを引き立てている。夜光マーカーもオリジナルにインスパイアされたもので、典型的なドットではなく、わずかに角度のついた線が配されている。

スマイルアンドウェイブ(笑顔で手を振って!)

新旧ともにスリムな形状をしている。

フォティーナ夜光が付いたエッグシェル文字盤か、あるいはホワイト文字盤にホワイト夜光の組み合わせのほうがよかったかもしれない。真っ白な文字盤に対してベージュ夜光がややマッチしていない。アンタークティック(南極)と呼ばれる時計を、スノーホワイトダイヤル仕様にしたというアイデアは大好きだが、私にとってはエッグシェルこそが、この時計のヴィンテージ志向を最もよく表していると感じる。

850ドル(日本円で約12万5000円)という価格は、競合製品と比較しても妥当だろう。スペック上、カーキ フィールド メカニカル(税込8万5800円)が最も自然な比較のように思えるが、アンタークティックは従来のフィールドウォッチとは違った雰囲気がある。

南極の風より涼しい
新しいアンタークティック 35mmは、1950年代のニバダ グレンヒェンの同名作品からインスピレーションを得ている。50年代半ば、米国は“ディープフリーズ作戦”と呼ばれる、一連の南極探査ミッションを開始した。リチャード・バード(Richard Byrd)提督がミッションを指揮しており、彼の手首にはニバダ グレンヒェン(クロトン)のアンタークティックがあった。次のような広告でまったく同じ時計を目にすることができる。

アンタークティックは頑丈で防水性があり、耐衝撃性もあった。それでいて35mm径だ。ヴィンテージのアンタークティックは現代の例と驚くほど似ている。ほんのわずかにアップデートが加えられた、完全復刻モデルである。リューズは最新版のほうが若干操作性が高いが、ヴィンテージアンタークティックは自動巻きムーブメントを搭載していたため、頻繁に巻き上げる必要はなかった。

新しいアンタークティックの真っ白な文字盤はシンプルさが魅力的だが、ヴィンテージは文字盤にこそ魅力がにじみ出ている。これはともにいい部分がある。誰かの物語を手首につけているのはそれだけでクールだし、あるいは思い出を新たに刻むことができるのもいいかもしれない。もちろん、ヴィンテージウォッチを実際に身につけて行動できるのか、あるいは身につけるべきなのかという不安もつきまとうだろう。

価格について、ニバダ グレンヒェンのギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏によると、状態にもよるものの600ユーロから1000ユーロ(日本円で約9万5000~15万9000円)でヴィンテージアンタークティックを見つけることができるという。ただ素晴らしいものを待つ必要はあるかもしれない。

結局のところヴィンテージかモダンか
“ヴィンテージ”、“モダン”コレクターの区別は、かつてないほど時代遅れ感がある。“真の”ヴィンテージの定義が何なのか(あるいは誰が決めるのか)ますますわからなくなってきているし、“ネオヴィンテージ”ウォッチへの関心も高まっている今、それが重要なのかどうかもわからない。最近のコレクターが求めているのは、1年前のものであれ51年前のものであれ、しっかりとした作りの時計なのだ。

ギヨーム・ライデ氏が2020年にニバダ グレンヒェンをリニューアルして以来、ブランドの伝統を生かした多くの商品や限定モデルをリリースしている。これはエクセルシオパークやヴァルカンといった、ほかの“ゾンビ”ブランドで行ってきたのと同じことだ。私が注目するリリースは、オリジナルに最も近い色合いのものであることが多い。誰かがブランドの歴史を直接的に、そして謝罪なしに堂々と描いているのを見るのは楽しい。

正直なところ、この価格帯のモダンなフィールドスタイルウォッチを買うとしたら、スタジオ・アンダードッグのフィールドコレクションのような、遊び心のあるユニークなフォルムのものにお金を費やすだろう。しかし、それらは私が現代の時計に求める基準だ。代わりに、愛するヴィンテージモデルの忠実な復刻版を望む人もきっといるだろう。この2点を比較するのはフェアではないかもしれない。というのも現在では両者ともに十分すぎるほどの伸びしろがあり、さらにそれ以上の余地があるからだ。

ニバダ グレンヒェン アンタークティック 35mmは、ニバダ グレンヒェン公式ウェブサイトにて12月23日まで予約受付中。35mm径×10mm厚(ラグからラグまでは42mm径)、316Lステンレススティール。ラグ幅は18mm(ストラップは16mmまでテーパーがかっている)。50m防水、ダブルドーム型サファイア風防。ムーブメントは手巻きCal.ランデロン21、2万8800振動/時、約36時間パワーリザーブ。ホワイト、エッグシェル、ブラック文字盤。ホワイトまたはベージュ夜光。質感のあるレザーストラップ。価格は850ドル(日本円で約12万5000円)。

プロパイロットXに万華鏡のような色彩をもたらした、最新のレーザー加工。

オリス プロパイロットX キャリバー400 “レーザー”が、ダイヤルに光のショーを演出する。
2022年にプロパイロットXコレクションを発表して以来、オリスはそれをとことん楽しみ尽くしてきた。その初代ラインナップのなかで、私の個人的なお気に入りは鮮やかなサーモンダイヤルだった。オリスは今年プロパイロットX カーミットを発表し、鮮やかなグリーンダイヤルのデイト窓に月に1度現れる、カエルの笑顔をフィーチャーした。そして今回、オリスはドバイ・ウォッチ・ウィークに合わせ、チューリッヒの研究所との共同研究によるレーザー技術を駆使し、これまでに見たことのないダイヤルを備えたプロパイロットX “レーザー”を発表した。

まずは最初にそのダイヤルの話から。オリスによると、角度によって光を受けて色が変化するダイヤルを作るために、製造工程上で斬新なレーザー技術が使われている。オリスはこの加工について、光をさまざまな組成に分割する表面加工を施すことで、時計を見る場所によって虹のような効果を生み出すと説明している。赤の光波は打ち消され、緑と青の光波は反射されることで、ダイヤルのクールなグラデーションが生まれるのだ。ロゴとインデックス、ミニッツトラック、ダイヤル上のテキストにもレーザー加工が施され、立体的な効果を与えている。

ダイヤル以外に目を向けると、“レーザー”はプロパイロットXのおなじみのフォルムに、39mm径のチタンケースとそれにマッチするブレスレットを採用している。内部にはオリスのマニュファクチュールキャリバー400が搭載され、5日間という驚異的なパワーリザーブを誇る。2020年にキャリバー400を発表した当初は、性能に関する不満や批判もあったが、現時点ではすべて解消されているようだ。そして今回の発表では、ちょっとした微調整が加えられた。

オリス プロパイロットX “レーザー”の希望小売価格は81万4000円(税込)で、HODINKEE Shopを含むオリス正規販売店で購入可能だ。

このチタンダイヤルはブルーからグリーン、パープルまでの美しいグラデーションを描くが、オリスの説明によると、実はダイヤルには色の顔料は使われていない。その代わり、レーザー処理によってチタンに変化が与えられており、反射して戻ってくる光の波が可視光線のスペクトルの特定の部分だけを含むようにしている。さらに、“きらめく”レインボー効果を生み出すために、その他の処理も加えられている。

私はまだこの時計を実際に見たことはないが、優れたダイヤルを作るために採用されたエキサイティングな技術が施されていることは間違いなさそうだ。しかも、パイロットウォッチを完璧にモダンにアレンジしたプロパイロットXに自然とフィットするような仕上がりだ。こうしたダイヤルのデザインをとるのは、オリスが6時位置のデイト窓を廃止する絶好のタイミングでもあった。特に、あるカエルがそこから顔を出していたときなどはあまり気になったことはなかったが、これはシンプルな3針時計にふさわしいダイヤルであり、これ以上のものはなさそうに思える。

新しい“レーザー”の希望小売価格は81万4000円(税込)で、スタンダードダイヤルのモデルは69万3000円(税込)だ(“カーミット”は税込72万6000円で、カエルのバッグがついてくる)。レーザーテクノロジーが駆使されているためにこの値段でも十分と思えるが、約5000ドルというのは現在極めて競争力のある価格帯である。ともあれ、手首の上でレーザーショーを楽しみたい人たちにとって、新たな選択肢ができたことは素晴らしいことだ。プロパイロットXが、漫画のカエルであれ、最先端のレーザーであれ、オリスからの実験的の提案であるならば私は大歓迎だ。

基本情報
ブランド: オリス(Oris)
モデル名: プロパイロットX キャリバー400 “レーザー”

直径: 39mm
厚さ: 12mm
ケース素材: チタン
文字盤色: レーザー加工が施されたチタン
夜光: 針にブラックのスーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: チタン製ブレスレット

oris propilot caliber 400 movement caseback
ムーブメント情報
キャリバー: オリス キャリバー400
機能: 時間、デイト表示
直径: 30mm
パワーリザーブ: 120時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 21
クロノメーター認定: なし、オリスは1日あたり-3/+5秒の精度と公表している
追加情報: MyOris登録で10年の延長保証

価格 & 発売情報
価格: 81万4000円(税込)

ヴィンテージブライトリングは簡単にふたつのカテゴリに分類できる。

ナビタイマー・コスモノートシリーズは非常に素晴らしく、ブライトリングがかつて手がけたほかの製品を圧倒している。彼らのトップタイムは手ごろでいい作品だった。彼らのワールドタイマーは超クールだったし、ラトラパンテのデュオグラフはさらにクールだった。しかし、我々のお気に入りのヴィンテージブライトリングはまったく売れることはなかった。

カナダ空軍(RCAF)と国防総省(DND)は長年にわたり、オメガ、レマニア(他社のためにムーブメントを製造していた)、ブライトリングに、ワンプッシュのクロノグラフを注文する習慣があり、それはパイロットや軍人に与えられた。しかし、カナダ人は合理的で実利的な集団なので、普通の軍人がオメガやブライトリングのクロノグラフ(どちらも当時は有名で評判の高い高級時計メーカーだった)を与えられたと知ったら、それを売りたくなるかもしれないと考えた。また軍人の友人や知人、学友の敵がオメガやブライトリングのような高級腕時計を手首につけているのを見たら、それを盗みたくなるかもしれないとも。

そのため、オメガとブライトリングの両社は、RCAFや国防総省のために無署名の文字盤を備えたこれらの時計を製造していた。こうすることで、一般人(兵士や民間人)は自分が見ている時計が何なのかを知ることができない。では、例えば上の写真の時計が実際にブライトリングであることをどうやって知ることができるのだろうか?

その答えはムーブメントにある。

そしてケースはこのようになっている。

ヴィンテージムーブメントに詳しい方なら、上のムーブメントはバルジュー23をモノプッシャーに改造したものだとわかるだろう。このムーブメントは、優れたミリタリーウォッチのように、30分積算計とハック機能付き秒針(スモールセコンド)を特徴としている。裏蓋には国防総省オリジナルの発行番号と、1967年に製造されたことを示す、“/67”で終わるシリアル番号が記載されている。

これらの腕時計は、オメガとブライトリングの両方のバリエーションで、ますます人気と価値が高まっている。その理由はいくつかある。それは間違いなく本物のミルスペックウォッチであるということ、伝説的な時計メーカーの製品であること、そしてオメガとブライトリングがそれぞれの歴史のなかでワンプッシュクロノグラフをほとんど製造していないということだ。サインのない時計はスリーパー(大穴)であり、オリジナルの軍仕様に近いので、最もクールだというのが我々の意見だ。これらの時計のいくつかは、後にケースバックに“Surplus”を意味する“S”と刻印され、文字盤に“Omega”、“RCAF”、“Breitling”と書かれたモデルが作られていた。昨年11月、ジュネーブ・クリスティーズでは、オメガRCAFのワンプッシュモデルが、1万4000ドル(当時の相場で約116万円)以上で落札されている。

そのため地元のフリーマーケットやヴィンテージウォッチ店、あるいはeBayなどで、文字盤に完全に何も書かれていないモノプッシャークロノグラフを見たのなら、それは軍の歴史を持つ非常にクールで珍しいオメガやブライトリングかもしれない。

プレゼントに最適な腕時計として、自分が贈るとしたらどんな時計を選ぶか、

ホリデーシーズン目前のこの時期に、まだギフトを準備していない? 大丈夫。安心して欲しい。

普段使いに重宝しそうな機能派から、あらゆるシーンで活躍するジェンダーレスなモデル、そしてこだわりが詰まった変わり種まで、個性豊かな腕時計を紹介しているので、「まだ何も決めていない!」とお悩みの方は参考にしてはどうだろう。意外にも10万円以下の手頃な価格で購入できるコストパフォーマンスに優れた腕時計というのは、探せばまだまだあることに気付くはずだ。

モンディーン stop2go(ストップ・トゥ・ゴー)コレクション

 10万円以下の価格で時計を贈るとしたら、何がいいか。時計好きの方向けならきっと機械式がよさそうだが、必ずしも贈る相手が時計好きとは限らない。そんな前提で選んだのは、モンディーンのstop2go(ストップ・トゥ・ゴー)だ。

 その名が示しているのだが、stop2goはスイス国鉄(SBB)のすべての駅時計に採用されている、秒針が58秒でダイヤルを1周し、12時位置で約2秒停止したのちに分針が1分進み秒針が再び動き始めるという、ユニークな“stop2go”機能を腕時計で再現した名作である。この時計のムーブメントはクォーツ式。といっても秒針は一般的なクォーツウォッチのような1秒ごとのステップ運針ではなく、機械式のようなスイープ運針方式を採用している。

 そのユニークな動きはもちろん、駅時計に採用されているくらいなので視認性が高く普通に時計としても使いやすいところも魅力だ。またホワイトダイヤルモデルには、時針と分針の裏側に蛍光塗料(スーパールミノバ)が塗布されていて、日中にダイヤルに当たった光を反射して蛍光塗料に光をチャージ。暗所ではその光がダイヤルに反射し、長短針の外周が発光するという、これまた変わった仕様になっている。シンプルな見た目とは裏腹に、実はこの時計でしかない唯一無二の特徴を持った時計なのだ。

リューズレスデザインのため、時間合わせはケース側面(3時位置) にある窪みを付属のプッシュピンで押して操作する。パッケージも何だかかわいい。

 相手の好みを想像しながら選ぶのも楽しいが、せっかくプレゼントを贈るなら話のネタになるもの、それでしか味わえないものがいいと筆者は常々思っている。その点、この時計は申し分ない。何しろ、“stop2go”機能はこの時計でしか採用されないのだから。ちなみにオススメしたい理由はそれだけではない。ファーストモデルは2016年に登場したが、2023年バージョンではリューズのないケースデザインが採用され、より“駅時計”感のある見た目になったのだ。

 さらに従来の41mmサイズ以外に34mmサイズが新たにバリエーションとして加わった。41mmモデルは男性がつける分には問題ないが、華奢な女性が(男性でも細腕の人は)つけるのは難しいだろうと懸念していたが、この新サイズの登場でそうした心配もなくなった。それだけでなく、例えばペアで贈るという選択肢もできるようになったのである。これは贈り物にぴったりじゃないか!

価格: 40mmモデル(レザーストラップ仕様)は9万9000円、34mmモデルは9万1300円(ともに税込)
そのほかの詳細は、モンディーン公式サイトへ

牟田神 佑介、エディター
セイコー 5スポーツ  GMTモデル

 人に物を贈るときは、どうせならそのプレゼントで何か新しい発見をして欲しいと思っている。その人が普段飲まない種類のお酒を送ってもいいだろうし、どこか遠い地へのトラベルギフトを送るのもいいかもしれない。自分では買わなかったかもしれないが、意外とよかった、なんて声を聞けると気持ちがいい。だから、10万円以下でプレゼントしたい時計、というテーマが発表されたとき、この時計が頭をよぎった。2022年に発売された、セイコー 5スポーツ SKX Sports Style GMT モデルだ。

 この時計はセイコーが海外向けに発売した逆輸入モデル、SKX007のデザインをベースとしたGMTウォッチで、直径42.5mm、厚さ13.6mmのケースに収められている。SKX007で1分刻みでドットが配されていた回転ベゼルはツートーンの24時間表記に変更され、視認性の高い赤いGMT針が堂々とセットされた。長らく愛されてきたSKXのデザインを壊さずに、GMT機能を搭載した采配は素晴らしい。いい意味でクセがなく、万人に受け入れられるルックスに仕上がっている。

 搭載しているムーブメントは、Cal.4R34。パワーリザーブは41時間で、GMT針を動かして第2時間帯を調整できる“Caller(コーラー)”GMT機能を搭載している、もちろん、時針単調整機能を備えた“Flyer(フライヤー)”GMTと比較する向きもあると思うが、この時計は上記の内容を5万2800円(税込)のパッケージで提供しているのだ。GMTウォッチとは何かを経験する初めての1本としては、十分だと思う。

 旅行需要の拡大を見越してなのか、今年は特にGMTウォッチのリリースが多かった気がする。この時計をセレクトしたのは、僕自身その流れを受けて気になっていたからかもしれない。だが、すでに3針、クロノグラフ、ダイバーズとある程度のカテゴリを揃えていて、次の1本に悩んでいる誰かに渡すなら、タイミング的にもなかなかいい選択肢なんじゃないかと思ったのだ。もしこの年末、数年ぶりの旅行を検討している友人が周りにいたら、さりげなくこの時計を贈ってみたい。それがどこか遠い地への後押しへとなるのであれば、僕はうれしい。

価格: 5万2800円(税込)
その他の詳細は、セイコー公式サイトへ

松本 由紀、アシスタント エディター
シチズン NJ015 “ツヨサ”シリーズ

 私が選んだのは、今年の9月に日本上陸を果たした(5月にアメリカで先行発売していた)シチズンコレクション NJ015 “ツヨサ”シリーズだ。10万円以下でプレゼントに最適な時計という切り口を聞いたとき、パッと頭に浮かんだのがティソ PRX 35mm(調べたらギリギリ10万円を超えていた)とこのシチズン NJ015だった。どちらもいわゆるブレスレット一体型SSウォッチで、特に意識はしていなかったが、このジャンルしか浮かばなかったあたり、最近気になっているんだと思う。

 本モデル最大の魅力は6万3800円(税込)~という、大変リーズナブルな価格だ。ブレスレット一体型の3針機械式時計のなかで、最も手ごろだと言えると思う。先ほど名前を挙げた同カテゴリのティソの価格は、シチズンのおよそ1.6倍する(もちろんその分パワーリザーブ、防水性などはティソのほうがスペックは上だ)。

 アメリカではブラック、ブルーダイヤルのベーシックなカラーもあるが、日本ではグリーン、イエロー、ライトブルー、ブルーグラデーションダイヤル、そしてブラックダイヤル&コンビの5種類のみが展開している。手ごろな機械式時計を探している時計初心者にはプレゼントしやすい値段だし、時計愛好家には個性的なカラーウェイで遊べるセカンドウォッチとしてもおすすめしやすい。
この記事でも語られているとおり、“誰かがこれを初めての機械式時計として手に取ったら、カジュアルでもそしてよりドレッシーなシーンでも、当然のように活躍している姿が目に浮かぶ”。

 私のお気に入りはグリーンダイヤルだ。単に緑色が好きという理由と、イエローやライトブルーよりかは扱いやすいのではと思ったからだ。もちろん、手に取りやすい価格なので何本購入してもいい!

価格: SSモデルは6万3800円、コンビモデルは6万6000円(すべて税込)
その他の詳細は、シチズン公式サイトへ

和田 将治、Webプロデューサー/エディター
バルチック エルメティック ツアラー

Photograph by Mark Kauzlarich

 近年、マイクロブランドの台頭によって、10万円以下の価格帯でも非常に魅力的な選択肢が増えてきました。時計愛好家やマニア向けだけでなく、機械式時計のエントリーモデルとしても手に取りたくなるブランドやモデルが増えているのはとてもうれしいことです。今回僕が選んだのは、2017年のキックスターターのプロジェクトを機に本格始動したフランス発の時計ブランド、バルチックから今年新たに発表されたエルメティック ツアラーです。

 バルチックは、1940年代〜1960年代のヴィンテージウォッチからインスピレーションを得たモデルを展開することで知られるブランドです。これまでセクターダイヤルのクロノグラフ、本格的なダイバーズウォッチからマイクロローター搭載のドレスウォッチまで幅広く手掛けてきました。エルメティック ツアラーは、ヴィンテージエレガンスを追求した同社初のフィールドウォッチです。

 ケースは直径37mm、厚さ10.8mmのスティール製で、ラグ・トゥ・ラグ(全長)も46mmと非常に着けやすいサイズ感です。リューズがケースと一体化したデザインとなっていることもこの時計の快適性を上げてる要因のひとつです。防水性能は150mを備えており、仕事へ行くときや子供を公園に連れて行くときのような日常使いから本格的な冒険まであらゆるシチュエーションで使える1本です。

Photograph by Masaharu Wada

 内部には、Miyota製の自動巻きCal.9039を搭載しています。パワーリザーブは約42時間と短いですが、信頼性の高いムーブメントです。バルチックが手頃な価格で手に入れることができる理由のひとつでもあります。巻き上げ効率は悪くないため、普段使いにおいてはそれほど心配する必要はなさそうです。

 カラー展開はグリーン、ブルー、ベージュ、ブラウンの4色(個人的にはベージュがお気に入りです)。文字盤の外周にはブラックにホワイトのレイルウェイトラックが印刷されたチャプターリングが配されています。チャプターリングと内側のダイヤルの両方についているスティールのベベルは、光を受けた時にキラッと光り絶妙なアクセントになっています。また、アプライドインデックスは夜光塗料で作られているため、とても明るく発光し、明るい場所でも暗い場所でも高い視認性を誇ります。

 ストラップは、ダイヤルと同色のトロピックストラップが付属。純正のビーズ オブ ライス ブレスレットも装着可能なので、あとから買い足して楽しめるのもポイントですね。

 エルメティック ツアラーは、バルチックが得意とするヴィンテージスタイルのデザインを全体的にとても使いやすいパッケージにまとめられたモデルです。きっと誰に贈っても喜ばれる1本になると思います。自分に贈ってもいいですよね。

 本モデルについての詳細はマークのハンズオン記事「新しいバルチック エルメティック ツアラーが、遅れつつも今年最高のリーズナブルウォッチのひとつに加わる」をご覧ください。