50万円台以下で手に入るおすすめドレスウォッチ4選。

つい最近まで、スポーツウォッチの人気に押されつつあったドレスウォッチだが、我々は似通ったスポーツウォッチに飽きてきたのだろうか、近年はパテック フィリップやカルティエといったハイエンドのドレスモデルへの関心が増してきた。ただ今回は、もっと手軽にその魅力の一端に触れられる可能性を模索し、50万円台以下で流通するおすすめのドレスウォッチを各エディターがピックアップ。

 なおドレスウォッチは狭義の解釈では、“金無垢素材かつ2針の薄型手巻き時計であり、機能はなし(スモセコやカレンダーも含む)”に定められるのが一般的だ。しかし、時代が前進するなか、ドレスウォッチをもう少し広く捉えるのは現実的なことだと考える。

 本記事でのチョイスは前述した定義に必ずしも則らず、“ケース素材および駆動方法、機構は問わず、2針もしくは3針の薄型(10.9mm以下)モデル”とした。手に取りやすい価格帯の提案であるためこれを前提としている点をご了承いただきたい。

 本企画においてのドレスウォッチとは、“クラシカルなスタイルを踏襲した時計”くらいのイメージであり、ドレスアップ/ダウンスタイルも想定できるような汎用性のあるモデルをセレクトした。時計ビギナーはもちろん、スポーツウォッチマニアの方も我々が選んだドレスウォッチに一度目をとおしてもらいたい。

佐藤 杏輔、エディター
ユニバーサル・ジュネーブ “シャドウ”シリーズ(ヴィンテージウォッチ)

今回のテーマはセレクトが本当に悩ましかった。狭義のドレスウォッチを現行の時計で求めるなら、少なく見積もっても100万円以上の予算は覚悟しなければならない。例えば、ムーブメントが機械式ではなくクォーツ、あるいはケースがゴールドではなくステンレススティールであるなど条件を少し広げるなら、現行の時計であっても手頃な価格で手が届くものが見つかるが、その選択肢は極めて限られている。そんななかで筆者が今、手頃な価格でドレスウォッチを購入するなら、間違いなく現行の時計ではなくヴィンテージウォッチから選ぶ。ヴィンテージならブランドやコンディション次第で狭義のドレスウォッチも選択肢がいくつも挙がるし、それこそ前述のように条件を少し広げればその自由度は格段に増すからだ。なお、今回ドレスウォッチを選ぶ際の最低限の条件として、薄型の2針または3針(付加機能はギリギリでデイト表示)であること、そしてブレスレットではなくレザーストラップタイプの時計とした。この条件を満たす数多くの選択肢のなかでも筆者が特に注目しているのが、ユニバーサル・ジュネーブの“シャドウ”シリーズだ。

ユニバーサル・ジュネーブと言えば、多彩な機能を備えたクロノグラフを展開した“コンパックス”シリーズや、スカンジナビア航空のアメリカ便就航を記念してリリースされたポーラールーター(のちのポールルーター)などがよく知られている。特にポーラールーターは若かりしジェラルド・ジェンタがケースデザインを手がけたことでディープな時計好きのあいだでは評価が高い(この時計に興味がある方はこちらの記事をぜひ読んでみて欲しい)が、1960年代に登場した“シャドウ”シリーズもまたジェンタがデザインを手がけた名品だ。

“シャドウ”シリーズは、マイクロロータームーブメントを採用した極薄ドレスウォッチとして発表された。それぞれケース素材でモデル名が異なり、金無垢のゴールデンシャドウ、金張りのギルトシャドウ、そして SSケースのホワイトシャドウを展開した(デイトの有無で厚みは若干異なるが、いずれも6.5mm〜8mmのあいだに収まる)。ブランドのほかの名品に引けを取らない“シャドウ”シリーズだが、現在の市場ではそれほど注目はされておらず、状態のいい金無垢のゴールデンシャドウでも50万円以下で手に取ることができるし、SSケースのホワイトシャドウに至ってはコンディションによるところも大きいが、1桁万円から探すこともできる。フォーマルなシーンでしかつけないから費用を抑えたい、あるいは逆に手頃な価格だからこそ毎日のようにつけたいなど、選ぶ理由は人それぞれだが、いずれにせよ、ドレスウォッチを身近なものにしてくれる選択肢のひとつとなってくれることは間違いないだろう。

価格: 約10万〜50万円程度(執筆時の相場)。仕様や状態によって異なる。

松本 由紀、アシスタント エディター
ロンジン コンクエスト ヘリテージ

私は差し色にゴールドをあしらったモデルが好きだ。ただ金無垢モデルになると、純粋に手が届かないというのもあるがモデルによってギラつき感を感じてしまう。なので今回のドレスウォッチ基準に則ったとき、プラス要素としてインデックスや針にゴールドをあしらったものを選びたいと思った。

 チョイスしたロンジンのコンクエスト ヘリテージはシルバーのサンレイダイヤルに、ゴールドのドーフィン針とくさび形インデックス(ドレスモデルのインデックスにはバーとローマンが好まれるのはわかっている)、翼のついた砂時計のロンジンロゴを組み合わせている。またそのカラーウェイにマッチする、柔らかい色合いのブラウンレザーストラップも素敵だ。

 またドレスウォッチとしては賛否両論あるだろうセンターがやや窪んだダイヤルも、視認性を損ねることなく取り合わせており、個人的には評価したいディテールだ。デザインは、まさに私の理想とするドレスウォッチにピッタリなのだ。

 日付もないシンプルな3針モデルで、ケース径は38mm、厚みは10.8mm、パワーリザーブは約72時間と、取り扱いやすいスペックなのもいい。

 薄型かつシンプルという汎用性の高さはドレスウォッチの優れた点だが、“機能はシンプルに、デザインは派手に”をモットーに生きる私の場合、ドレスウォッチであってもほんの少しの工夫(今回はインデックスとダイヤル)が施された時計を選びたい(ここでピュアなドレスウォッチ主義者に陳謝します)。賛同してくれる方はいるだろうか?

価格: 42万9000円(税込)

牟田神 佑介、エディター
ノモス オリオン 33 デュオ

手に取りやすいプライスのドレスウォッチと聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのがノモスのオリオンだった。ノモス自体がそもそもバウハウスの精神を継ぐミニマルウォッチの名手的ブランドではあるのだが、そのなかでもオリオンは特に繊細だ。細く伸びるインデックスに、ミニッツトラックまで届くすらりと長いバトン針を持ち、ふちが柔らかく湾曲するベゼルは薄く、ダイヤル上には“NOMOS Glashütte”のロゴだけがプリントされている。サイズも直径32.8mmから用意されていて小ぶりだが、長く伸びるラグのおかげか、男性の手首の上でもフィット感が損なわれるということもない。このラグも、直線的なものが多いノモスのほかのコレクションと比べて少しだけ内向きになっている。サイズ33のオリオンを実際に使用していた時期があったのだが、クラシックなジャケットなどと合わせた際にはこのラグのわずかな角度が効いてくるように思えた。

 そんなオリオンには、デュオと名付けられた2針モデルも存在する。象徴的な6時位置のスモールセコンドが取り払われたことでより洗練され、エレガントさが増しているように見える。また、インデックスと針にはイエローゴールドがあしらわれた。ライトベージュのベロアレザーストラップとの組み合わせでは柔和な印象だが、これをノモスではおなじみのブラックコードバンのストラップに付け替えればグッとメリハリが効いた華やかな印象になるはずだ。搭載しているのは、薄型の手巻き式自社製ムーブメントであるアルファ2。これによってケースの厚みは7.6mmにまで抑えられている。

 ケースは小ぶりかつ薄く、ダイヤルにはバーインデックスを備え、デイトもない端正な2針表示の時計だ。古典的なドレスウォッチの定義はひととおり押さえている。しかも、高精度な自社製造のムーブメントまで搭載してこの価格である。ドレスウォッチではあるが、ノモスらしい華美すぎないデザインが好き、という僕の気持ちに共感してくれる人がいたらぜひ検討してみて欲しい。

価格: 27万5000円(税込)

和田 将治、Webプロデューサー/エディター
グランドセイコー 初代グランドセイコー“ファースト”(ヴィンテージ)

ライフスタイルが多様化する現代では、ドレスウォッチの幅が広くなっていくように感じますが、個人的に絶対に外せないのは「薄型のラウンドケース」を備えた「2針(または3針)」であること。フォーマルなシーンで袖口にすっぽりと収まり、クロノグラフなどの複雑機構がつかないというのが個人的には絶対条件なのです。

 僕がおすすめするドレスウォッチは、“ファースト”の愛称で知られるグランドセイコーの初代モデルです。1960年、スイス製時計が世界の高級時計市場を席巻していた時代に国内で蓄積された時計製造のノウハウを生かし「国産最高級の腕時計をつくる」という野心的なプロジェクトの結果として誕生したグランドセイコー。その初代モデルは、1960年から約3年間の製造でしたが、探せば今でもつけることができる個体を十分に見つけることができます。確かに初代グランドセイコーは2011年、2017年に復刻されており、60周年の2020年からはレギュラーモデルにもラインナップされ、限定モデルもいくつか登場しています。今回の50万円以下という条件で考えるといずれも予算オーバーですが、オリジナルモデルならまだ選択肢があるのです。

 ケースは直径35mm、厚さ9.7mmの14Kの金張りで、ダイヤルには多面カットの時分針、そして力強い立体的なインデックスが配されていて、控えめながらも存在感を放ちます。12時位置のフラクトゥール(ドイツ文字)の“Grand Seiko”ロゴは、世代によってプリント、彫り、アプライドと変遷があり、小さな部分ですが時計の印象を左右する大きな要素です。手に取って見比べてみるのも楽しいです。ムーブメントは手巻き式のCal.3180。当時はスイスのクロノメーター基準に匹敵する独自の厳しい品質検定を経て、合格した製品にのみ付与される精度証明書と共に販売されました。現代のグランドセイコーも独自のグランドセイコー規格がありますが、最初のモデルからあったというのは興味深いですね。

 ファーストモデルは、現代のグランドセイコーのウォッチメイキングにもつながるものであるだけでなく、日本の時計産業におけるマイルストーン的なとても重要な存在です。ここぞという時に袖元を飾ってくれるドレスウォッチとして、僕にとってはパーフェクトなもののひとつです。

価格: 約30万~50万円程度、仕様、状態によっては約100万円のものも(執筆時の相場)

メタリックブルーが洗練を宿す、フルメタルG-SHOCKのニューモデル。

今年もまた、人気のフルメタルG-SHOCKに鮮やかな色合いの新作が加わった。果たして、このブルーが意味するものとは?

カシオの新製品発表会の時期がやってきた。ひと足先に僕たちはこの春から展開される新作群を目にしてきたわけだが、カシオの時計製造50周年というアニバーサリーイヤーということもあってか、G-SHOCKの40周年であった昨年に続いて魅力的なプロダクトが勢揃いしていた。なかにはそうきたか! と思わず膝を打ってしまう、まだ紹介できないことをもどかしく思うようなモデルもあった。

そして今回も、G-SHOCKにおける定番モデルとしてすっかり定着したフルメタルG-SHOCKの新作が見られた。2023年末に発売されたマルチカラーモデルもまだ記憶に新しいが、今作では2100系と5000系のアイコニックなデザインを踏襲しながら、それぞれダイヤルと液晶外周のガラス部分をブルーに染め上げている。

2100系をベースとしたGM-B2100ADは文字盤に、5000系をベースとしたGMW-B5000Dはガラス面に蒸着を行うことで、SS製の外装にもマッチするメタリックなブルーを鮮やかに表現している。特にGM-B2100ADはサブダイヤルの小針、立体造形のインデックスにも蒸着を施しており、これによってより統一感のある顔立ちに仕上がっている。なお、このブルーの発色の美しさは、山形カシオの精密金型技術が可能にする緻密な表面加工によるものであると、カシオは広報資料に記している。

なお、タフソーラーやBluetooth接続によるスマートフォン連携など、便利な機能群は引き続き搭載されている。防水性能は20気圧で、ファインレジン製の緩衝材をケースとベゼルのあいだに挟み込んだ耐衝撃構造も変わらない。また、GM-B2100ADはダブルLEDライト、GMW-B5000DではフルオートLEDバックライトによって暗所での視認性も確保している。GM-B2100AD-2AJFは8万8000円(税込)、GMW-B5000D-2JFは8万4700円(税込)で、ともに2024年4月の発売を予定している。

今作においても既存のフルメタルG-SHOCK同様、ベゼルの表面をヘアライン、斜面をポリッシュで磨き分けることでメタルの質感を最大限に引き出している。文字盤全面にブルーをあしらったGM-B2100ADはそのメタリックな質感もあり、とりわけこのフルメタルケースと調和しているように見える。思えば、GM-B2100シリーズにおいてダイヤル全面に着色を施した例は初めてなのではないか? 昨年のマルチカラーモデルのようにインデックスに色を入れたり、もう少しカジュアル色が強いメタルカバードモデル(GM-2100)でカラーダイヤルを採用することはあったが、フルメタル2100系のなかでこの顔立ちは非常に新鮮だ。よく見るとダイヤルの表面は透過しているようでもあり、このブルーの色合いを表現するために開発チームがどのような調整を行ったのかは話を聞いてみたい。

ちなみに、僕は今回のふたつのリリースが単なるフルメタルG-SHOCKのカラーバリエーションだとは思っていない。というのも、最近、同じくブルーを強調したカシオの製品を見たからだ。ずばり、カシオの時計製造50周年を祝う鏑矢(こうし)として2月末に発売されたカシオトロンである。コーポレートカラーでもあるブルーを纏った時計が立て続けに発表されたところには、カシオとしてアニバーサリーイヤーをさらに盛り上げていきたいという思いがあるようにも感じられる。まあ、僕の考えすぎで、偶然ブルーのモデルが続いただけなのかもしれない。しかしそれをおいても、フルメタルの重厚さを打ち消すような軽快なブルーは魅力的だ。どちらもこの夏、抜けるような青空の下でつけてみたい時計である。

基本情報
ブランド: G-SHOCK
型番: GM-B2100AD-2AJF、GMW-B5000D-2JF

直径: 44.4mm(GM-B2100AD-2AJF)、43.2mm(GMW-B5000D-2JF)
厚さ: 13mm
ケース素材: SS
文字盤色: ブルー(GM-B2100AD-2AJF)、液晶ディスプレイ(GMW-B5000D-2JF)
夜光: ダブルLEDライト(GM-B2100AD-2AJF)、フルオートLEDバックライト(GMW-B5000D-2JF)
防水性能: 20気圧防水
ストラップ/ブレスレット: ワンプッシュ三つ折れ式バックル付きSS製メタルバンド
追加情報: タフソーラー、ワールドタイム、フルオートカレンダー、パワーセービング機能、ストップウォッチ、時計アラーム、スマートフォン連動

価格 & 発売時期
価格: 8万8000円(GM-B2100AD-2AJF)、8万4700円(GMW-B5000D-2JF)ともに税込

バルチックから新作エムアール ルーレットが登場。

バルチックは新しいエムアール ルーレットで、かつてのブランドの名品(それほど昔のモデルではないが)を復活させた。“MR”はマイクロローターを意味しており、この時計はバルチックの超人気モデルであるMR-01(カラトラバのスタイルにマイクロローターを搭載した初のモデル)と多くの点で似通っている。ステンレススティール製のケースは直径36mmに厚さが9.8mm(ラグからラグまでは44mm)で、バーティカルサテン仕上げが施されたベゼルと貫通ラグを装備。内部には42時間のパワーリザーブを持つHangzhou製のマイクロロータームーブメント、Cal.5000aを搭載した。既存のMR-01との違いはダイヤルと針にあり、従来の顔立ちに新鮮さとスポーティさを加えている。

今回見せたデザインは、なにもバルチックにとってまったく新しいものではない。以前にも同じダイヤルで、A Collected Manとのコラボレーションによる鮮やかなブルーダイヤルのものと、古代中国のフォントを使用したものをリリースしていた。このダイヤルを踏襲したニューモデルではブラック、シルバー、サーモン、ブルーという従来のベースカラーを踏襲しており、ブラック以外のすべてのバリエーションは梨地のメインダイヤルとサテン仕上げを施したふたつのエリア(内側のアワートラックと、外周のハッシュマークが付いたミニッツトラック)に分けられている。7時半の位置にあるインダイヤルにはサークル状のギヨシェ、ブラックモデルのダイヤル中央部にはグロス仕上げが施された。すべてのモデルはバルチックによってデザインされたセリフ体を使用しており、アワートラック上の区分けが“ルーレットホイール”風のデザインとモデル名の由来となっている。これはバルチックからすると比較的目新しいあしらいかもしれないが、過去にはほかのブランド(主にパテック)が文字盤上で使用している。なおブラックとブルーのモデルは、写真から判断する限りではやや黄色がかった印刷色が使用されている。

これらのモデルはすべて7月4日に発売されているが、限定ではないので買い逃しを心配する必要はない。各色、初回の100個にはシリアルが刻まれ、その後は現在のMR-01のように通常モデルとして販売される。価格はレザーストラップ付きで10万2300円、バルチックが展開している多種多様なSS製ブレスレットを選んだ場合は11万6600円(ともに税込)になる。

我々の考え
話は3年前にさかのぼる。バルチック MR-01が発売された2021年、ブランド自体はすでに知っていたが、その手ごろな価格とヴィンテージ風のスタイルに引かれて思い切って購入することにした。その時は欲しかったサーモンダイヤルはすでに売り切れていたので、代わりにブルーダイヤルを手に入れた。同モデルのブレゲ数字とドーフィン針をとても気に入っていて、当時の自分にとっては最高の時計のひとつだった。ただし、ひとつだけ気になる点があった。それは手首に巻いたときに、Hangzhou(ハンチョウ)製ムーブメントのマイクロローターにガタつきや緩みが感じられたことだ。これは私のものだけでなく、ほかの個体でも確認できていた。しかし非常に手ごろなムーブメントであることから、多くの人はそこまで気にしていなかっただろうと思う。

今回のモデルはいつもとベースカラーこそ同じかもしれないが、新しいダイヤルデザインのなかでは色の印象が異なって見える。それはおそらく、ルーレットダイヤルが前回のリリースよりもスポーティだからだろう。MR-01ではサーモンとブルーが私のお気に入りだったが、今回はシルバーかブラックダイヤルのどちらかに軍配が上がりそうだ。主張が強まったドーフィン針とダイヤル上に追加された要素が、モノトーンの色調をもっとも効果的に引き立てているように見える。グレーかブラックのストラップを合わせれば、カラトラバスタイルの腕時計の完成だ。

基本情報
ブランド: バルチック(Baltic)
モデル名: エムアール ルーレット(MR Roulette)

直径: 36mm
厚さ: 9.8mm
全長: 44mm
ケース素材: 316Lステンレススティール
文字盤色: ブルー、シルバー、サーモン、ブラック
インデックス: 梨地、またはグロス仕上げのダイヤルにアラビア数字とともにプリントされた“ルーレット”レイアウト
夜光: なし
防水性能: 3気圧
ストラップ/ブレスレット: イタリア製レザーストラップ、またはメタルブレスレット

ムーブメント情報
キャリバー: Hangzhou(ハンチョウ)製マイクロローター Cal.5000a
機能: 時・分表示、スモールセコンド
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 自動巻き

価格 & 発売時期
価格: レザーストラップモデルは10万2300円、メタルブレスモデルは11万6600円(ともに税込)
発売時期: 発売中
限定: なし、しかし初回生産の100本にはシリアルナンバーが入る

カーキ フィールドにエンジニアド ガーメンツとのコラボレーションモデルが登場。

これまでもN.ハリウッドやショット、ポーターといったブランドとのWネームを発表してきたハミルトンが、この10月17日(木)にNY発のファッションブランドであるエンジニアド ガーメンツとのコラボレーションモデルをリリースする。エンジニアド ガーメンツは1988年に設立したセレクトショップをメイン業態とする日本の会社、ネペンテスから1998年に発足したブランド。企画、生産はニューヨークで行われており、デザイナー・鈴木大器(だいき)氏のもとテーラーリングにワーク、アウトドア、そしてミリタリーに根差したコレクションを展開している。クラシックなアメリカンスタイルを下地としたシンプルなクリエイションながらディテールは細部まで計算され尽くされており、そのものづくりの姿勢が“巧みに設計された洋服(エンジニアド ガーメンツ)”という名前の由来になっている。そんなエンジニアド ガーメンツとのコラボモデルのベースには、カーキ フィールドシリーズが選ばれた。その名も、カーキ フィールド チタニウム エンジニアド ガーメンツ リミテッドエディションである。

本作はカーキシリーズの名前を冠したフィールドウォッチだが、その顔立ちは現在展開されているどのモデルとも微妙に異なる。ベージュのフォティーナ夜光やサンドブラスト加工のケースなど、ヴィンテージのミリタリーウォッチを思わせるディテールはこのコラボモデルには見られない。ブラックのダイヤルに対してメリハリの効いた太いアワーマーカーはグッとモダンな印象。ブラッシュ仕上げが施されたチタンケースもインダストリアルさを強調しており、耐久性、堅牢性の高さを主張している。しかしその一方でケース径は36mm、厚さは10.85mmとサイズ感は小振りだ。

ムーブメントは、ハミルトンの3針モデルではおなじみのCal.H-10。約80時間のパワーリザーブとニヴァクロン®︎製ヒゲゼンマイを有する同ムーブメントは、裏蓋にあしらわれた半円状の窓からその姿を見ることができる。また裏蓋にはコラボの証であるブランドロゴと、本作が1999本限定(エンジニアド ガーメンツの創業年にちなんでいる)である旨が刻印されている。

カーキ フィールド チタニウム エンジニアド ガーメンツ リミテッドエディションは、10月17日(木)より16万9400円(税込)で販売される。また、時計は外出時の持ち運びにも便利なラウンドジップ式のウォッチケースに収められている。

ファースト・インプレッション
エンジニアド ガーメンツのコラボと聞くと、ベースとなるアイテムに+αのひねりを加えるイメージを個人的には持っている。レザーシューズで複数種類の革を組み合わせてみたり、左右非対称にしてみたり、アウターをコンバーチブルにしてみたりなど、その表現方法も多彩だ。同じ時計だと、ダイヤルを左右反転させたモデルを思い出す人もいるだろう。そんなブランドがコラボ相手だけに、ハミルトンインターナショナルCEOのヴィヴィアン・シュタウファー(Vivian Stauffer)氏からこのモデルを見せてもらったときは驚いた。まさか、こんなにシンプルな時計が出てくるとは思っていなかったのだ。

カーキ フィールドをコラボレーションのベースとして選んだのは、鈴木大器氏だ。ファッションの分野で人気が高いというベンチュラやPSRなどではなく、ハミルトンのなかでも明確なバックボーンを持つカーキを手に取ったところには、アメリカンスタイル、そしてミリタリーにインスピレーションを得ているブランドとしての共感があったという。そのためか、本作には鈴木氏のこだわりが細部まで行き届いている。彼は今回のコラボにあたり、「現代的でありながら時代を超越」し、ハミルトンのカーキとエンジニアド ガーメンツの真髄を体現する理想的なフィールドウォッチを求めた。カーキ フィールドに特徴的なドーム型風防をフラットに変更したり、軽量で機能的なチタニウムを素材に使用したりといった点は、まさにモダンさの現れだろう。

そのように現代的なルックスを模索する一方で、本作にはフィールドウォッチとしてのカーキ フィールドへのリスペクトも込められている。それが表現されているのが、無駄を削ぎ落として視認性を優先したというダイヤルのデザインと、カーキのオリジナルモデルにならった36mmというサイズ感だ。ハミルトンはインターナショナルな需要に応える目的から、40mm径前後のリリースが多い。通常のモデルではなかなかお目にかかれないこのサイズ感は、ユニセックスな魅力に加え、本作に小径のカーキを求める時計愛好家に刺さる魅力を添えている。

「各々のブランドが個性を出そうと衝突してしまうことが、コラボレーションを行ううえではよく見られます。しかし、エンジニアド ガーメンツとのプロジェクトは非常にスムーズに進行しました」とヴィヴィアン氏は語る。これは古きよきアメリカをバックボーンに持つカーキ フィールドという時計をとおして、両ブランドが価値観を共有し、同じゴールを見据えて進んだ結果だと思う。エンジニアド ガーメンツとハミルトンのフィロソフィーが巧みに融合した今回のデザインについて、とても気に入っているとヴィヴィアン氏は満足げに話してくれた。

僕個人の所感を述べると、本作はコラボモデルという点を置いても非常に実用的で長く愛用できるプロダクトになっていると思う。「ムーブメントが入っているか不安になります」とヴィヴィアン氏がにこやかに語る軽量さに加えてチタニウムならではの堅牢さ、そしてミニマルで視認性の高いダイヤルとツールウォッチに求められる要素が揃っている(防水性能も10気圧だ)。加えて、カーキ フィールドシリーズへのリスペクトも感じられる。本作はエンジニアド ガーメンツ流の、モダンフィールドウォッチである。直近ではマーフウォッチのホワイトダイヤルなども話題に挙がっているが、直近のハミルトンのリリースでは個人的に本作を高く評価したい。

基本情報
ブランド: ハミルトン
モデル名: カーキ フィールド チタニウム エンジニアド ガーメンツ リミテッドエディション

直径: 36mm
厚さ: 10.6mm
ケース素材: チタニウム
文字盤色: 外周にレコード引きが施されたサンレイ仕上げのブラックダイヤル
インデックス: プリント
夜光: ニッケル時・分・秒針にスーパールミノバ®︎を塗布
防水性能: 10気圧防水
ストラップ/ブレスレット:チタニウムブレスレット

時計は持ち運びにも便利なウォッチケースに入れて提供される。
ムーブメント情報
キャリバー: H-10
機能: 時・分・秒表示
パワーリザーブ: 80時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 25石
クロノメーター認定: なし

価格 & 発売時期
価格: 16万9400円(税込)
発売時期: 10月17日(木)※先行発売
限定:世界限定1999本

今注目しているスモールブランドの新作時計5選

“マイクロブランド”でも何でも呼び方は自由だが、ワールドタイマーからダイバーズウォッチまで、彼らは感動的な時計をつくり上げている。

2017年、私はシカゴのダウンタウンから電車に乗って北へ30分ほど行き、自分にとって初めての“マイクロブランド”ウォッチであるオーク&オスカーの新作、“オルムステッド”を購入した。12月のシカゴらしい寒くてどんよりとした日で、オーク&オスカーの狭苦しい本社に座り、ウィスキーを片手にふたりのチームとおしゃべりしながら、新しい時計のブレスレットのサイズを調整してもらっていたのを覚えている。

あれはもうかなり前のことだが、今でもこの時計がスモールブランドやマイクロブランドの魅力を象徴しているように思える。そのあとこの市場は拡大の一途をたどり、すべてを追いかけるのがほぼ不可能になっている。こうしたブランドの優れたデザインや仕様の時計を見かけない日はほとんどない。

過去20~30年のあいだに、これらマイクロブランドは、グローバルなサプライチェーン(多くは中国で製造されるが、必ずしもそうとは限らない)を活用し、小売チャネルを介さずにオンラインで消費者に直接販売する手法や、セリタやミヨタ製の手ごろで手に入れやすいムーブメントを使うことで成熟してきた。多くは少量生産や予約注文モデルで展開されており、このような要因によって、熱心な愛好家から手っ取り早く稼ぎたいと考える人まで、誰もが時計を製造し販売できる環境が整っている。優れたブランドは興味深く革新的なデザインを生み出し、そのなかには技術革新も増えつつある。

ロリエ、 エコ/ネイトラ、マリンの新製品。
2018年、ジェームズはマイクロブランドの台頭について記事を書き、レイヴン、ハリオス、アウトドローモといった第1世代のパイオニアたちを取り上げた。
「品質や誠実さよりも、新しさや安さに対する傾向がある」と、アウトドローモのブラッドリー・プライス(Bradley Price)氏は当時語った。「その巻き添えで、一部の時計バイヤーの頭のなかで、スモールブランドがひとまとめにされてしまうが、実際はもっと複雑だ」

新しいブランドがほかのブランドの消滅とほぼ同時に現れるような状況は、今でも変わっていないと言えるだろう。

数年後、ローガン・ベイカーは、前述の要因を巧みに利用し続ける時計製造における新たな“ミドルクラス”についての記事を執筆した。米国(ブリュー、モンタ)をはじめ、英国(フェラー、アンオーダイン)、東南アジア(ミン、ゼロス)、そのほか各地で、こうしたブランドはしばしばワクワクするような時計をつくり出しており、多くが成功を収めている。少なくとも数社が、年間売上高が1000万ドル(日本円で約15億3410万円)を超えていると話している。

これらスモールブランドは多くの場合、大手の伝統的なブランドが作れない(またはつくろうとしない)時計を製造している。これは、愛好家による愛好家のための時計であり、大抵は少人数のチームが運営全体を支えている。そうしたブランドが集まる場に、私はいまだに刺激を感じている。先週、ニューヨークで開催されたWindup Watch Fair(ワインドアップ・ウォッチ・フェア)を見て回り、いくつかのブランドに感銘を受けたため、ここで私のお気に入りを5つ(プラスおまけでもうひとつ)紹介しよう。

少なくともそのうちのいくつかは実際に試す予定だ。とくにもっと見たい時計があればコメントで教えて欲しい。また、私が見逃しているスモールブランドやマイクロブランドがあれば(おそらくたくさんあるだろう)それも教えて欲しい。

ロリエ オリンピア クロノグラフ
ロリエは2017年以降、20世紀半ばのデザインにインスピレーションを受けた手ごろな価格の時計をつくり続けている。このニューヨークのブランドの最新作は、1960年代の伝統的なレーシングクロノグラフを現代風にアレンジしたオリンピアだ。オリンピアにはどこか懐かしいデザインの趣があるが、ソフトなレッドとブルーのアクセントが今っぽさを加えている。これはある特定の時計へのオマージュではなく、1960年代という時代そのものへのオマージュだ。この種の時計でありがちな“本物が欲しくなる”ということも、ロリエ オリンピアには当てはまらない。このスタイルはそれ自体で十分に満足感を与えてくれる。

私の6.3インチ(約16cm)の手首に装着したロリエ オリンピア クロノグラフ。

オリンピアの316Lステンレススティール製ケースは39mm×13.8mm(ラグからラグまで46mm)で、その厚みのうち2mmはドーム型のヘサライト風防によるものだ。セイコーのNE88自動巻きムーブメントを搭載し、ねじ込み式リューズにより50mの防水性を備えている。短時間ではあったが、ワインドアップの際ロリエに話を聞いたところ、以前のクロノグラフに使用されていたシーガル製ムーブメントに比べ大幅に改善されたとのことだ。

オリンピア クロノグラフの価格は900ドル(日本円で約14万円)だが、そのフィット感と仕上げは非常に印象的だ。しっかりしたエンドリンク、ネジで固定されたブレスレットリンクを備え、ブレスレットは手首に自然に馴染む。クロノグラフのプッシュボタンの操作感も満足できるもので、触感がしっかり伝わる。コラムホイールの垂直クラッチに期待される通りかもしれないが、この価格帯での提供はうれしい驚きだ。

ソーシャルメディアへの投稿は控えめだが、ロリエは製品そのもので語らせ続けており、それがこのブランドで私が最も気に入っている点だ。

マリン インストルメンツ スキンダイバー OS “ポーラー”
ニューメキシコ州のデザイナー、ジャスティン・ウォルターズ(Justin Walters)氏は、2021年にマリン インストルメンツを創業した。多くのマイクロブランドと同様に、マリンもミッドセンチュリーの時計からインスピレーションを受けているが、ほかのブランドよりもモダンな印象を与える。マリンのスキンダイバーはウェットスーツを着用せずに潜水するために設計された、60年代の時計にヒントを得ているが、そのデザインはクリーンで現代的だ。エルジンやウォルサムに通じる一方で、アップルやノモスのような雰囲気もある。

スキンダイバー OS “ポーラー”は、ブラックPVDコーティングが施されたベゼルと、オレンジの先端が特徴的な秒針に対して、真っ白なダイヤルが強いコントラストを成しており、有名な“ポーラー”ウォッチをさりげなく意識していることは間違いない。サテン仕上げのSS製ケースのサイズは39mm×11.5mm(ラグからラグまで48mm)で、手首につけるとやや平らな印象を受けるが、これは伝統的なスキンダイバーの形状を踏まえれば予想どおりだろう。内部には標準的なセリタ製の自動巻きSW200-1ムーブメントが搭載されている。ポーラースキンダイバーはブラックラバーストラップ付きで販売され、さらに追加でNATOスタイルのストラップが付属している(個人的にはマリンのビーズ・オブ・ライスブレスレットに装着してもいいと思う)。この丈夫でしっかりとつくられた時計は1095ドル(日本円で約17万円)で手に入る。なおマリンのウェブサイトで直接購入できるほか、オンライン小売業者のハックベリーでも取り扱いがある。

ボーナスピック: アルテラム ワールドタイマー
ボーナスピック! 2022年にHODINKEEが初めてマリン インストルメンツを取り上げた際、私はすぐにこのブランドのデザインに引かれたため、創業者ジャスティン・ウォルターズ氏が新たに立ち上げた別ブランド、アルテラム・ウォッチ・カンパニーの存在を知り、とても興奮した。アルテラムはデビュー作として“ワールドタイマー”を発表したばかりだ。この時計は、世界を旅するための複雑な機構をミニマルかつ無骨なデザインで表現している。

アルテラムのワールドタイマーは、ブラスト仕上げとサテン仕上げが施された38.5mm×10.5mmのSS製ケース&ブレスレットを特徴としている。ワールドタイム機能にはセリタSW330-2 GMT自動巻きムーブメントが採用され、ウォルターズ氏はスイスのメーカー、ロベンタヘネックスと提携してこのワールドタイマーを製作した。初回生産は100本限定で、価格は2850スイスフラン(日本円で約50万円)。時・分“針”は回転ディスクに固定され、外周リングの回転ワールドタイムディスクは、2時位置の追加リューズで操作できる。

アトリエ・ウェン パーセプション(チタンまたはタンタル製)
タンタル製パーセプション。

私がアトリエ・ウェンのパーセプションを初めて体験したのは2022年のことで、そのころ、この誇り高き“メイド・イン・チャイナ”ブランドがHODINKEEで紹介された。ブレスレット一体型のこの時計は、当時優れていたものの、まだ改良の余地があった。つまりそのレビューでは腕毛が少々犠牲になったわけだ。

それ以降、このブランドは大きな進化を遂げてきた。今年、チタン製パーセプションの標準生産バージョンが発表された。パーセプションのストーリーはそのギヨシェ模様の文字盤から始まる。最近、職人がこれらの文字盤を仕上げるのにどれほどの時間がかかるのかについて、ソーシャルメディアで議論が巻き起こったが、その美しさは否定できない。特にパープルダイヤルは際立っている。

文字盤の仕上げに加え、アトリエ・ウェンはパーセプションのラインにチタンとタンタルを加えた。タンタルのブレスレットをつくるのは容易ではないため、これは目覚ましい進歩と言える。重厚な金属を手にしたとき、その技術の成果を実感できる。

「タンタルは粘着性が高く、工具がすぐに壊れてしまうんです」と、アトリエ・ウェンの共同創業者であるロビン・タレンディエ(Robin Tallendier)氏が説明してくれた。「タンタルを磨いたりサテン仕上げにしたりすると、工具が傷んでしまいます。特に難しいのが穴開けで、ブレスレットをつくるには避けて通れない工程です」

チタン製パーセプションも、より高価なチタン製スポーツウォッチに匹敵する仕上がりで侮れない。アトリエ・ウェンはチタン製パーセプション(3588ドル、日本円で約55万円)の予約注文を締め切ったばかりだが、まもなくタンタルモデルの少量生産が開始され、さらにコラボレーションも計画されている。